肛門疾患について

当院では、肛門周辺の疾患、特にいぼ痔(外痔核)、切れ痔(裂肛)、痔ろうなどの診断と治療を行っています。
痔の症状は自己判断し放置すると悪化することが多く、早期治療によって症状の改善や回復を期待できます。
痔ろうのように手術が必要な場合もありますが、患者様の負担を最小限に抑えた治療を心掛けています。
また、必要に応じて高度な医療機関への紹介も行います。
当院では、患者様のプライバシーを尊重し、受付での症状確認は行っておりません。
疾患に関する不安や疑問がある場合は、医師やスタッフまでお気軽にご相談ください。
このような症状は
ありませんか?
- 肛門付近に痛みがある
- 肛門が腫れている
- 肛門付近に膨らみがある
- 肛門が狭くなった気がする
- 排便後もすっきりしない
- 細い便が出る
- 排便の時に出血している
- トイレットペーパーに血が付
- 排便時に鋭い痛みがある
- 下着に膿がつく、便がついていることがある
- 肛門から粘液のようなものが出てくる
- 肛門から組織が一部出てくる、もしくは全体が出ることがある
- 長時間座っているとおしりに違和感や不快感がある
上記のような症状がある方は、何らかの肛門疾患が生じている可能性があります。
肛門疾患は日常生活において無視されることも多い病気ですが、多くの方が悩みを抱えている病気でもあります。いぼ痔(外痔核)・切れ痔(裂肛)・痔ろうなど、肛門周囲のトラブルは生活の質に大きな影響を与える可能性があります。症状が悪化する前に、お早めに医師にご相談ください。
当院で診察する肛門疾患
いぼ痔
いぼ痔は、正式には内痔核と外痔核と言い、肛門の内部にできたものを内痔核、肛門の外にできたものを外痔核と呼びます。肛門内外の血管が腫れてイボ状になる病気です。
いぼ痔は排便時に痛みを感じることが多く、日常生活に支障をきたす疾患となります。いぼ痔になる原因としては、便秘や過度な力み、長時間の座位などと言われています。
便秘や硬い便を排出する際に、肛門周辺の血管に圧力がかかり、その結果として血栓ができることがあります。これがいぼ痔の原因のひとつとなります。また、長時間座っていることや、仕事で座りっぱなしの姿勢を続けることも、血流が滞り、血管が膨張することもいぼ痔の原因となります。妊娠中の女性も、ホルモンの影響や子宮の圧迫によっていぼ痔になりやすいと言われており、さらに加齢に伴って血管が弾力を失うことで、いぼ痔のリスクが高まることが知られています。
いぼ痔の症状としては、便をする際に血が混じることや、肛門部に腫れ物が出現し、場合によっては手で押し戻さなければならない脱出が起こります。慢性的な症状や急に症状が出現することもあります。
肛門周辺の腫れや膨らみを「いぼ」と呼び、いぼに触れると硬さを感じることがあります。いぼは、排便時に痛みを伴うことも多く、特に便が硬いと痛みが強くなることがあります。いぼが硬い便とこすれることで、出血も見られ、便に血が混じったり、トイレットペーパーに血が付着すると言われています。また、いぼの腫れが引かない場合には肛門周辺にかゆみや不快感を感じることもあります。腫瘍性ポリープが大腸がんへ進展するリスクがあるため、早期の診断と適切な治療が重要です。
切れ痔(裂肛)
切れ痔は、肛門が硬い便によって裂けてしまうことで起こります。切れ痔は排便後の鋭い痛みが特徴で、その痛みが数時間続くこともあります。特に便が硬い(便秘)と、肛門の皮膚が裂けやすく、症状が悪化することもあります。また、下痢や頻繁な便通も肛門周辺を刺激し、裂肛を引き起こす原因になることがあります。切れ痔の主な症状は、排便時の鋭い痛みと出血です。便秘が慢性化している人に特に多く見られ、排便の際に肛門部に強い痛みを感じることが特徴です。切れ痔による痛みはしばしば数分から数時間続き、その後は痛みが和らぎますが、排便時には再度痛みが生じるため、患者さんは恐怖感を抱いてしまい便意を我慢することがあります。便意を我慢することによりさらに便秘が悪化してしまい、切れ痔の症状も悪化する悪循環に陥ることもあります。また、痛みだけではなく排便後に出血することがあり、トイレットペーパーや便に血が付くこともあります。切れ痔が慢性化すると、手術が必要となる場合もあります。
痔ろう
痔ろうは、肛門周囲に膿が溜まり、膿が外部へ排出されるための通路が形成される病気です。肛門の周りの腫れや強い痛みを伴うことや肛門や肛門周囲から膿が排出されることもあります。通常、肛門内に膿瘍ができ、その膿が膿道(痔ろう)として肛門周囲に通じる経路を形成します。この経路が開通することで、膿や血が漏れ出すと言われています。下痢がちな人や、成人男性に多く見られますが、乳児にも発症することがあります。
痔ろうの主な原因は、肛門周囲の感染となります。肛門周辺の腺から感染が広がり、膿瘍が形成されることで、膿が溜まり、その膿が肛門周囲に漏れ出す経路を作ります。膿瘍が発生する前に、肛門周辺に痛みや腫れが生じてしまい痔ろうとなります。痔ろうの膿が漏れ出すと、悪臭を伴うことがあるために早期な治療が必要となります。痔ろうは、特に膿瘍が治癒する過程で進行することが多く、再発を繰り返すことも多いと言われています。
痔ろうの主な症状としては、肛門周辺に膿や血が漏れることがあります。膿が漏れ出すと、下着や衣服が汚れることが多くなります。腫れや痛みも伴い、肛門周囲が圧痛を感じてしまいます。また、膿の排出が不完全な場合、発熱や全身的な倦怠感が現れることもあります。痔ろうの治療には、手術が必要になる場合もあります。
肛門ポリープ
肛門ポリープは、肛門と直腸の間の歯状線に発生する良性腫瘍です。一般的には無症状であることが多いですが、時には出血や不快感を引き起こすことがあります。肛門ポリープ自体は通常小さくて良性ですが、放置しておくと徐々に大きくなったり、他の疾患と誤診されることもあります。そのため、早期に発見し、必要に応じて治療を行うことが重要となります。肛門ポリープの原因としては、長期間の便秘や下痢、痔などが考えられます。症状としては、排便後も便が残っている感覚や、便意を感じやすくなること、さらに肛門周囲のかゆみやかぶれが現れることがあります。また排便時に便に血が混じることもあります。大きな肛門ポリープが原因となって肛門の周囲に不快感やかゆみを感じることもあります。痛みを伴うことはあまりありませんが、肛門ポリープが肥大することで排便時に圧迫感がある場合がございます。肛門ポリープが発生する原因は、便秘や長期間にわたる便の硬さが影響を与えていると考えられています。便秘や頻繁な力みは、肛門内の粘膜に刺激を与え、ポリープの形成を促すことがあります。また、過去に大腸ポリープや大腸癌を経験したことがある人は、肛門ポリープが発生しやすいとされています。肛門ポリープの診断は、医師が肛門内を直接視診する肛門鏡や必要に応じて大腸内視鏡検査を行う場合がございます。治療は主に手術によって行われます。
肛門周囲皮膚炎
肛門周囲皮膚炎は、肛門周辺の皮膚が炎症を起こす状態を指します。原因は裂肛や痔核、ポリープ、カンジダ感染、アレルギー反応など多岐にわたります。ウォシュレットの過度な使用が炎症を悪化させることがあるため、使用には注意が必要です。
肛門皮垂
肛門皮垂は、肛門の腫れが引いた後に皮膚がたるんだ状態を指します。このたるみによって清潔を保つことが難しくなり、膀胱炎などの感染症のリスクが高まります。特に女性に発症しやすいとされており、治療にはたるんだ皮膚の切除が行われることがあります。
肛門疾患の治療方法
いぼ痔
いぼ痔の治療法は、症状の軽減や病状の進行を防ぐためにいくつかの方法があります。
薬物療法としては、局所的に使用する軟膏やクリームが効果的となります。軟膏やクリームより、いぼ痔の痛みや炎症を和らげることができます。さらに、座薬や鎮痛薬を使用することでいぼ痔による痛みや痒みの症状を軽減することも可能です。薬物療法とともに、生活習慣の改善も重要となります。特にいぼ痔の原因にもなる便秘を防ぐためには、食物繊維を豊富に摂取することで便通を改善し、便が硬くなるのを防ぐことが重要です。また、水分をしっかりと摂ることも便通をスムーズに保つために大切な要素となります。いぼ痔を避けるために、長時間座っていることを避けることや適度に立ち上がって歩くことが、血流を改善しましょう。いぼ痔の症状が長引いたり、悪化したりする場合には早めに医師に相談するようにしましょう。
切れ痔
切れ痔の治療法は、主に生活習慣の改善と薬物療法となります。生活習慣の改善では特に便秘を防ぐことが効果的となります。便秘を改善するためには、食物繊維を多く含む食品を摂ることや水分を十分に摂取することも便を柔らかく保つことが有効となります。また便意を感じたら我慢せずにトイレに行き、排便時には過度に力まないように心掛けましょう。薬物療法としては、切れ痔専用の軟膏やクリームを使用することで、痛みや炎症を軽減することができます。場合によっては、座薬や鎮痛剤を使うことも効果的となります。
切れ痔の症状が長引いたり、痛みが強くなる場合は、医師による診察と治療が必要となります。
痔ろう
痔ろうの治療法は、膿瘍を完全に排出させることになります。初期段階では、抗生物質を使用して感染症を抑え、膿が排出されるのを促すことがありますが、瘍が大きくなると外科的手術が必要になることがあります。痔ろうが完全に治癒するまでには時間がかかる場合があり、治療後にも再発を防ぐための注意も必要となります。痔ろうの予防策としては、肛門周囲の清潔を保つことが重要となります。感染症を防ぐために、肛門周辺を清潔に保ち、湿疹や傷がないか定期的に確認することが勧められます。また、便秘が原因で痔ろうになることもあるために、便通をスムーズに保つために食物繊維を摂取し、便秘を防ぐことも痔ろうの予防策となります。痔ろうは早期に治療すれば、比較的短期間で回復することができますが、再発を防ぐためには手術後のケアが欠かせません。症状が改善しない場合や繰り返し膿が漏れる場合は、医師に早めに相談し、適切な治療を受けることが重要となります。
肛門ポリープ
肛門ポリープの治療法は、ポリープの大きさや症状の程度によって異なります。小さなポリープであれば、特に治療を行わない場合もございます。もしポリープが大きい場合や、出血や不快感を引き起こしている場合には、外科的に取り除く場合もございます。肛門ポリープの予防には、便通をスムーズに保つこと、便秘の予防が非常に重要となります。便秘を防ぐために、食物繊維を多く含む食品を摂取し、水分を十分に摂るようにしましょう。また、規則正しい生活を送り、適度な運動を心がけることが、便秘や肛門ポリープの予防に役立ちます。さらに、定期的な検診を受けることで、早期にポリープを発見し、治療に繋げることも大切です。
当院で行う肛門疾患の検査
血液検査

血液検査は肛門疾患を直接診断することは難しいですが、全身状態や症状の把握をすることができます。例えば、慢性的な出血がある場合には貧血が見られることがあります。そのため、血液検査で貧血の状態を確認することができます。また、肛門周囲の炎症がある場合、白血球数が増加することがあり、感染症や膿瘍、痔ろうの可能性を確認することができます。さらに、CRP(C反応性タンパク)やESR(赤血球沈降速度)といった炎症マーカーの上昇も、炎症性疾患が関与していることを確認できます。血液検査だけでは肛門疾患を確定することはできませんが、全体的な健康状態を把握する手がかりとなり、他の検査との組み合わせで肛門疾患の診断が進められます。
肛門鏡検査
肛門鏡検査は、肛門や直腸下部の視診を通じて、特に肛門周囲の疾患を診断するための検査です。専用の筒状の器具(肛門鏡)を肛門に挿入することにより、肛門内や直腸の手前の部分を観察することができます。肛門鏡検査は非常に簡便で、通常は局所麻酔なしで行われ、短時間で終わるため患者さんの負担が少ない検査となります。肛門鏡検査で確認できる代表的な疾患には、いぼ痔(外痔核)や切れ痔(裂肛)、肛門ポリープ、痔ろうなどがあります。肛門鏡検査は、視覚的に疾患の状態を把握するための非常に有用な検査となります。ただし、直腸や大腸の深部までは観察できないため、症状に応じて大腸カメラ検査が必要になることがあります。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)

大腸カメラは、大腸や直腸の内部を直接観察するための内視鏡を使用した検査となります。肛門疾患に関連する大腸の疾患を診断するために最も詳細で効果的な方法と言われています。大腸カメラ検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を観察します。特に便血や腹痛、体重減少、慢性的な下痢や便秘などの症状がある場合には大腸カメラ検査がおすすめとなります。大腸カメラを用いて診断できる疾患の例として、大腸ポリープ、大腸癌、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、大腸の出血源などがあります。大腸ポリープや腫瘍が発見された場合、その場で生検を行ったり、ポリープを切除したりすることも可能です。大腸カメラは、血液検査や肛門鏡検査では見つけられない病変を発見することができる検査となります。
肛門疾患のご相談
肛門疾患が疑われる場合には、肛門鏡検査や大腸カメラ(内視鏡検査)などを行い適切な治療を受けることが重要です。肛門疾患の重症度に応じて薬物療法、生活習慣の改善、外科的手術などがあり、最適な治療をご提案させて頂きます。些細な症状でも、いぼ痔、切れ痔、痔ろうを放置することなく、お気軽にご相談ください。