- 大腸内視鏡検査の食事が重要な理由
- 便秘傾向のある方の大腸内視鏡検査
3日前からの準備 - 大腸内視鏡検査前日
- 大腸内視鏡検査当日の朝
- 腸管洗浄剤と食事を併せてきれいな腸内へ
- 検査食(専用パック)の活用
- コンビニで整える前日の食事
- ポリープ切除後の食事
- よくあるご質問
大腸内視鏡検査の食事が
重要な理由
大腸カメラは、腸の内側を直接観察してポリープや早期がん、炎症の兆候を見つける検査です。その力を最大限に発揮するには、「前日に何を食べるか」がとても大切です。消化しきれない食べかすや繊維が腸に残っていると、内視鏡のレンズに付着したり、腸壁に薄く張り付いたりしてカメラの視界が曇りやすくなります。わずかな凹凸や色調の変化をとらえるにはクリアな視野が必要ですので、前処置食は検査の“見え方”を根本から左右します。
前日の食事を対策することで腸管洗浄剤がスムーズに作用し、便が早い段階で透明に近づきます。視界が確保されると観察がスムーズになり、腸壁の細かな血管像や表面の微小な変化まで確認しやすくなります。その結果、ポリープの拾い上げ率が上がり、不要な洗浄や吸引の回数が減って検査時間も短くなる傾向があります。時間が短いほど体への負担や緊張も軽くなり、鎮静の量や回復までの時間にも良い影響が期待できます。
一方で、前日の食事に繊維や脂質、色の濃い食材が多いと、腸内に残留物が残りやすく、腸管洗浄剤の効果が十分に出にくくなります。検査中に追加の洗浄や吸引が増えると、観察に集中できる時間が減り、結果として小さな病変の発見に不利に働くことがあります。準備が不十分な場合は、やむを得ず再検査が必要になることもあります。せっかくの検査を一度で確実なものにするためにも、前処置食の徹底は欠かせません。
また、消化にやさしい内容で前日を過ごすことは、体調面の安定にもつながります。脂質を抑え、やわらかい食事にすることで胃腸の負担が軽くなり、当日の腸管洗浄剤による水分喪失にも備えやすくなります。こまめな水分摂取と組み合わせれば、ふらつきや脱水の予防にも役立ちます。検査の安全性と快適さは、前日の食べ方で大きく変わります。
前処置の食事は“我慢するだけのルール”ではなく、より正確で安全な検査につなげるための実用的な工夫です。前日に白くやわらかい低脂肪の食事へ切り替え、指示された時間以降は固形物を避けて透明な水分だけにする。このシンプルな積み重ねが、見逃しの少ない検査と安心につながります。ご不明な点があれば、遠慮なくご相談ください。
「よく見えること」と「楽に受けられること」は両立します。
便秘傾向のある方の
大腸内視鏡検査3日前からの準備
三日に一度程度の排便が続く方は、検査の三日前から食事内容を少しずつ切り替えると、当日の仕上がりがよくなります。基本は、白い主食を中心に、脂肪分の少ないたんぱく質をやさしい調理法で取り入れ、具材はやわらかく加熱したものに限定することです。朝は白がゆを薄味で、昼はつゆを薄めたうどん、夜は蒸した鶏ささみや湯引きした白身魚を小鉢の豆腐と合わせる、といった構成が目安です。この組み合わせは消化の負担を小さくし、腸内に残る固形物や繊維を減らし、腸管洗浄剤の効きも安定しやすくなります。
水分補給は期間を通して大切です。少量ずつ、こまめに、透明な水分をとってください。具体的にはミネラルウォーター、透明な経口補水液、無色のスポーツドリンクが適しています。緑茶や紅茶、コーヒー、アルコール類は避けたほうが安全です。コーヒーや濃いお茶は利尿作用や腸管刺激があり、色の濃い飲料や果肉・繊維を含む飲料は残渣の原因になります。三日前からの穏やかな切り替えは、当日に無理をしないための“助走”です。段階的に負担を軽くするほど、体調の安定と可視性の向上の両方に良い影響が出ます。
大腸内視鏡検査前日
前日は最も厳格に食事を管理する日です。朝から夕方まで、白い主食を中心にやわらかく消化のよいものだけを選び、繊維の多い食材や油脂の多い料理、色の濃い食べ物は避けてください。白がゆ、つゆを薄めたうどん、耳を落とした食パンは適切です。たんぱく質は、蒸した鶏ささみ、湯引きした白身魚、殻をむいたゆで卵が扱いやすく、大豆製品では絹ごし豆腐や薄味の玉子豆腐が向いています。野菜や果物は量と質に注意が必要で、皮や種、繊維の多い種類は控えてください。どうしても添える場合は、やわらかく煮たじゃがいもや、完熟バナナを少量にとどめると安全です。
味付けは薄味を心がけ、油やバター、マヨネーズ、チーズといった脂質の多い調味料は避けましょう。夜の21時を過ぎたら固形物は中止し、それ以降は透明な水分のみをとってください。ここでの透明な水分とは、水、透明な経口補水液、無色のスポーツドリンクです。個別の指示がある場合は、そちらを最優先してください。前日の一日をこの方針で過ごすと、当日の洗腸がスムーズに進み、腸管の視界がクリアになります。結果として検査の効率が上がり、不快感や緊張感の軽減にもつながります。
大腸内視鏡検査当日の朝
当日の朝は固形物を召し上がらないでください。透明な水分に限って、医師から指示された最終飲水時刻まではお飲みいただけます。腸管洗浄剤を服用していただく関係で、脱水の予防は重要です。しかし、むやみに大量の飲水を一度に行うのではなく、決められた範囲で適宜補っていくことが理想です。透明な経口補水液や無色のスポーツドリンクは、電解質の補給に役立ちます。色の濃いお茶や果肉入りのジュース、炭酸飲料、アルコールは避けてください。鎮静を伴う検査の場合は、絶飲食の時間が厳密に定められていることがあります。安全のため、必ず事前にお渡しした指示書に沿ってお過ごしください。
腸管洗浄剤と食事を併せて
きれいな腸内へ
腸管洗浄剤は製品ごとに既定の服用量と手順が決められており、基本的には医師の指示のとおりに進めていただくことが大原則です。前日の食事制限がしっかりできていると、腸管洗浄剤の効果が早く安定して現れます。便の状態が透明に近づくほど、腸管の観察に適した環境が整い、不要な洗浄や吸引が減ります。逆に前日の食事で繊維や脂質、色素の多い食品を摂取してしまうと残渣が多くなるため腸管洗浄剤が十分に働かず、検査中に余分な洗浄が必要になり、結果として検査の時間が延びることがあります。食事で「残さない」準備を行い、腸管洗浄剤で「流す」仕上げをする。この二つがそろって初めて最も見やすく、安全で短時間の検査に近づきます。
また、腸管洗浄剤の服用中は体調の変化に注意を払ってください。ふらつきや脱力感を覚えた場合は無理をせず座って休み、少量の透明な水分で補って様子を見てください。症状が改善しない場合や迷ったときは、ためらわずに当院へご連絡ください。独自の判断で服用量を大きく増減させることは避け、必ず指示の範囲で調整を行うようお願いいたします。
検査食(専用パック)の活用
前日に使える検査食は、消化が速く、腸内に残る固形分や繊維を少なくする設計です。朝・昼・夕の三回分が個包装になっていて、忙しい方でも時間どおりに取り入れやすく、味つけもだし風味やレモン風味など控えめで食べやすく工夫されています。自分でメニューを組み立てる手間がなく、量の管理や調理の負担もありません。遠方から来院される方や前日も仕事がある方に便利です。
使い方はシンプルで、指示された時間に該当のパックを開けてそのまま食べます。最後の摂取が終わった後は、固形物を避けて透明な水分でつないでください。検査食は前日の準備用で、検査当日は固形物は禁止です。当院でも検査食をご用意していますので、希望される方はお声がけください。迷いなく規定どおりに準備を進められることが、検査の質を高める近道です。
コンビニで整える前日の食事
検査のパックの食事以外にも、前日の食事をコンビニでそろえる方法はどこの地域でも同じ品質で準備ができ、分量の管理がしやすい点で実用的です。選び方の基準は白い主食を中心に薄味でやわらかく、脂肪分と繊維の少ないものを組み合わせることです。具の入っていない塩むすび、耳を落とした食パン、つゆを薄めたうどん、プレーン味のサラダチキン、だしのおかゆパック、具のないコンソメスープなどが安全です。豆腐のサラダを選ぶ場合は、ドレッシングを別添にして少量だけ使い、海藻や皮付き野菜が混ざる商品は避けてください。果物は皮や種に繊維が多いので、完熟したバナナを少量だけにすると安心です。
飲み物は透明な水分が原則です。色の濃い飲料や果肉入りジュース、炭酸飲料、カフェインを含む飲み物は避けてください。ヨーグルトやチーズなどの乳製品は、脂肪分と残渣の点で向かない場合が多く、当院でも原則として控えていただく基準にしています。コンビニでの選択は、基準を守れば検査食に近い内容を再現できます。迷ったときは「白い・やわらかい・薄味・透明な水分」の四つを思い出して選んでください。
ポリープ切除後の食事
内視鏡検査でポリープを切除した場合、治療後から傷口をいたわる期間があることが望ましいです。切除当日はなるべく固形物を控え、白湯や水、透明な経口補水液、具のない薄味のスープで過ごしていただくのが安全です。翌日からは、おかゆや絹ごし豆腐、やわらかいうどんなど、消化のよい食品を少量ずつ再開することが、治療後の出血などのリスクを軽減します。味つけは塩分を控えめにし、香辛料や刺激の強い調味料は一週間程度避けていただくと安心です。
また、同期間は繊維の多い野菜や海藻、こんにゃく、ナッツ、皮付きの果物、炭酸飲料、アルコール類も控えてください。行動面では飲酒や長風呂、激しい運動、長距離の移動は一週間程度の見合わせが目安となります。万が一、鮮やかな血便が続く、ふらつきや動悸が強い、黒色便が出る、発熱や強い腹痛を伴うといった異常があれば自己判断はなさらず、速やかに医療機関へご連絡ください。段階的に食事の幅を戻していくことが合併症を防ぎ、治療後の傷の治りを促す最短の道筋になります。
よくあるご質問
前日の食事量が少なくて空腹で眠れません。どう対処すればよいですか?
前日21時以降は固形物を中止していただきますが、就寝前の空腹感がつらい場合には、白湯や水、透明な経口補水液を少量ずつゆっくりお飲みください。温かい白湯は胃腸への刺激が少なく、口や喉の渇きを和らげ、心理的な満足感を得やすいという利点があります。多量に一気に飲むと夜間の排尿回数が増え、睡眠の質を損なう可能性がありますので、コップ半分程度を目安にしていただくと安心です。
また、前日の朝〜夕にかけては、白がゆや薄味のうどん、絹ごし豆腐、蒸した鶏ささみなどの“白く・やわらかく・低脂肪”の食品で、適切なカロリーと水分を確保することが重要です。日中の摂取が整っていれば、夜の空腹感は緩和されやすくなります。空腹で眠れないからといって、規定外の間食や甘味飲料に手を伸ばすと、腸内に残渣が残りやすくなり、結果として検査の視認性が損なわれます。どうしても我慢できない場合でも、透明な水分の範囲に限定して対応してください。
常用薬やサプリメント、プロテインは中止すべきでしょうか?(抗凝固薬・糖尿病治療薬がある場合)
サプリメントとプロテインは、原則として前日から中止をお願いします。製品によっては溶け残りや色素、添加物が腸内に残り、洗腸の妨げになる可能性があるためです。ビタミン剤やハーブ系サプリも同様に、検査前は控えてください。再開のタイミングは検査後にご案内をいたします。
一方、医師から処方されている常用薬は中止の是非が個別に異なります。特に抗凝固薬・抗血小板薬(ワルファリン、DOAC、アスピリン等)を服用中の方は、ポリープ切除の可能性や出血リスクを踏まえた綿密な判断が必要ですので、必ず事前にお知らせください。休薬や継続の可否、代替の可否を主治医と調整いたします。
糖尿病治療薬(経口薬・GLP-1受容体作動薬・インスリン等)についても、低血糖を避けるために投与量やタイミングの変更が必要になることがあります。絶飲食の時間や検査開始時刻との関係で調整しますので、自己判断はなさらずに事前にお薬手帳をお持ちのうえご相談ください。降圧薬など、朝に継続内服が必要な薬は少量の水で所定時刻に服用いただく場合があります。最終的には当院の指示書に従ってください。
飲んでよい飲み物・避けるべき飲み物を教えてください。お茶やコーヒー、ジュース、炭酸はどうですか?
当院では、安全性と視認性を優先し、原則として「透明な水分のみ」を推奨しています。具体的には水、透明な経口補水液、無色のスポーツドリンクが該当します。色の濃い飲料、果肉・繊維・乳成分・炭酸・アルコールを含む飲料は、腸内に残渣を残したり、ガスを増やしたり、脱水や血糖変動を招くおそれがあるため避けてください。
お茶やコーヒーは、抽出成分やカフェインによる利尿・刺激の観点から原則不可としています(施設により許可の幅が異なる飲料ですが、当院基準では避けていただきます)。フルーツジュースやスムージーは果肉や繊維、甘味料の影響のため、炭酸飲料はガス貯留の原因になるため、牛乳・ヨーグルト飲料など乳製品も残渣や脂質の点から不可としています。
なお、最終飲水時刻は鎮静の有無や検査枠の時間によって厳密に設定されます。指示書に記載された時刻を超えての飲水はなさらないようお願いいたします。規定を守っていただくことが、検査の安全性と精度を高める最短の近道です。
検査当日の飲水や絶飲食のルールが不安です。鎮静を使う場合は何に注意すればよいですか?
検査当日は固形物は禁止で、透明な水分のみを指示された最終飲水時刻までお取りいただけます。鎮静(静脈麻酔)を併用する場合、誤嚥を防ぐためにも絶飲食の時間管理がより厳密になります。指示書に記載された固形物の最終摂取時刻と水分の最終摂取時刻を必ず守ってください。予定時刻を過ぎてからの飲食が判明した場合、安全を最優先に検査を延期させていただくことがあります。
また、当日は時間に余裕をもって来院され、受付後はトイレの場所を確認し、腸管洗浄剤の服用手順と検査前の呼び出しに備えてお待ちください。鎮静剤を使用した場合は検査後にふらつきや眠気が残ることがあり、自転車・バイク・自動車の運転はできません。必要に応じて付添いの方の同伴や公共交通機関のご利用をご検討ください。水分の再開時期や食事の戻し方は、検査後の体調と処置内容に応じて医師・看護師が個別にお伝えしますので、その指示に沿ってください。
準備中に体調が悪くなったり、ふらつきや吐き気が出た場合はどうすればよいですか?延期の判断は必要でしょうか?
腸管洗浄剤の服用中や前日の食事制限期間に、ふらつき・冷汗・動悸・吐き気・強い倦怠感が出た場合は、無理をせずにいったん休憩し、少量の透明な水分で補って様子を見てください。それでも改善が乏しい、あるいは症状が増悪する場合は速やかに当院へお電話ください。脱水や低血糖、循環動態の変化などが背景にある可能性があり、服用ペースの調整や検査スケジュールの見直しが必要となることがあります。
胸痛や呼吸苦、意識が遠のく感じ、動けないほどの腹痛、黒色便を疑う所見、めまいが強く立てないなどの強い症状がある場合は、緊急受診を含めた対応が必要です。糖尿病治療中の方は低血糖に注意し、普段よりぐったりする、手が震える、発汗が強い、判断力が落ちるといったサインに気づいたら、自己判断を避けて必ずご連絡ください。体調の異変を早めに共有していただければ、中止・延期も含めて最適な選択をご提案できます。無理をして予定どおりに進めるより安全を優先することが、結果的に質の高い検査につながります。

