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血便+腹痛のときに考える病気 〜すぐ受診すべきサインとは?〜消化器内科専門医が解説。

 

こんにちは。ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治です。

少しずつ暑くなってきましたね!

まだ梅雨明けはしていない?ということでしたが、早く夏が来るのが待ち遠しいですね。

体調を崩さないように、注意して、こまめに水分、体を冷やしながらお過ごしくださいね。

 

さて、今回は「腹痛を伴う血便について」です。

 

「おなかが痛くなって、トイレに行ったら血が出ていた」

「下痢だと思っていたら、便に赤い血が混じっていた」

「痔があるから、その血だと思ってよいのだろうか」

このような症状が突然起こると、驚いてしまいますよね。

 

血便だけであれば、痔など肛門付近の病気が原因となっていることも少なくありません。

しかし、血便と腹痛が同時に起こっている場合には、大腸の炎症や血流障害などが隠れている可能性もあります。

今回は、血便と腹痛があるときに考える病気、受診を急いだ方がよい症状、当院で行う検査について解説します。

 

1.血便と腹痛が重なったときは注意が必要です

 

血便とは、便の表面に血が付着していたり、便の中に血が混じったり、排便時に血液だけが出たりする状態です。

血液の見え方には、次のような違いがあります。

  • トイレットペーパーに鮮やかな赤い血がつく

  • 便の表面に赤い血が付着している

  • 便全体に赤黒い血が混じっている

  • 血液と粘液が混じった便が出る

  • 真っ黒で、ねっとりとした便が出る

血液の色だけで原因を確定することはできませんが、出血している場所を推測する手がかりになります。

特に、腹痛に加えて下痢、発熱、吐き気、便通の変化などがある場合は、肛門だけではなく、胃や腸の中に原因がないか確認することが大切です。

 

2.突然の腹痛と血便では「虚血性大腸炎」を考えます

 

 

虚血性大腸炎は、大腸へ流れる血液が一時的に不足することで、大腸の粘膜に炎症や傷が起こる病気です。

典型的には、

  • 突然の腹痛

  • 便意

  • 下痢

  • その後に赤い血や赤黒い血が出る

という順番で症状が現れることがあります。

左側の下腹部が痛むことが多いとされていますが、痛む場所だけで診断することはできません。

便秘、脱水、血圧の変動などが発症に関係することもあります。

軽症で改善する場合もありますが、まれに腸の傷が深くなり、入院治療が必要になることもあります。

突然の腹痛に血便を伴った場合は、「少し血が出ただけ」と考えず、早めに医療機関を受診してください。

 

3.下痢・発熱を伴う場合は「感染性腸炎」の可能性があります

 

 

細菌やウイルスなどによる感染性腸炎でも、腹痛と血便が起こることがあります。

特に細菌による腸炎では、

  • 繰り返す下痢

  • 差し込むような腹痛

  • 発熱

  • 吐き気や嘔吐

  • 血液や粘液が混じった便

などがみられることがあります。

受診時には、症状が出る前に食べたもの、同じ食事をした人の体調、旅行歴、抗菌薬の使用歴なども診断の手がかりになります。

感染性腸炎が疑われる場合には、便検査や血液検査を行うことがあります。

下痢止めは、病原体や毒素の排出を妨げる可能性があるため、血便や発熱があるときに自己判断で使用することは避け、医師や薬剤師へ相談してください。

 

4.血便が続く場合は「潰瘍性大腸炎・クローン病」も確認します

 

潰瘍性大腸炎やクローン病は、腸に慢性的な炎症が起こる「炎症性腸疾患」と呼ばれる病気です。

次のような症状が続く場合には注意が必要です。

  • 血液や粘液が混じった下痢

  • 腹痛を繰り返す

  • 便の回数が増える

  • 排便しても、まだ便が残っているように感じる

  • 夜中にも便意で目が覚める

  • 発熱や体重減少がある

  • 貧血を指摘された

若い方にも発症する病気であるため、「若いから大きな病気ではない」とは限りません。

症状を繰り返している方や、市販薬を飲んでも改善しない方は、一度ご相談ください。

問診、血液検査、便検査、大腸カメラなどを組み合わせて診断します。

 

5.大腸がんや大腸ポリープでも血便と腹痛が起こります

 

 

大腸がんは、早期にはほとんど症状がないことがあります。

一方で、病変が大きくなったり、便の通り道が狭くなったりすると、

  • 血便

  • 腹痛やおなかの張り

  • 便秘と下痢を繰り返す

  • 便が細くなる

  • 残便感が続く

  • 貧血

  • 原因の分からない体重減少

などの症状が現れることがあります。

大腸ポリープも、通常は無症状ですが、大きさや場所によっては出血することがあります。

血便が一度だけで止まった場合でも、大腸の病気が完全に否定できるわけではありません。

特に、40歳以上の方、便通の変化が続いている方、貧血を指摘された方、ご家族に大腸がんの方がいる場合には、大腸カメラを検討します。

 

6.痔があっても、腹痛まで痔のせいとは限りません

 

 

鮮やかな赤い血がトイレットペーパーにつく場合、いぼ痔や切れ痔などが原因となっていることがあります。

切れ痔では排便時の肛門痛、いぼ痔では排便時の出血や肛門の腫れなどがみられます。

ただし、痔は基本的に肛門付近の病気です。

そのため、痔がある方に腹痛、下痢、発熱、体重減少などがみられる場合、すべての症状を痔だけで説明できるとは限りません。

「以前から痔があるから、今回の血便も痔だろう」と決めつけず、腹痛が重なっている場合は腸の状態についても確認しておきましょう。

 

7.黒い便とみぞおちの痛みでは胃・十二指腸からの出血も考えます

 

 

血便というと大腸からの出血をイメージされる方が多いと思います。

しかし、真っ黒でねっとりとしたタールのような便は、胃や十二指腸などから出血している可能性があります。

特に、

  • みぞおちが痛い

  • 吐き気がある

  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往がある

  • 痛み止めを継続して飲んでいる

  • 血液を固まりにくくする薬を飲んでいる

  • 立ちくらみや息切れがある

といった場合には注意が必要です。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの出血は、急に状態が悪化することもあります。黒い便と体調不良がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

なお、抗血小板薬や抗凝固薬などを服用している方は、自己判断で薬を中止せず、処方した医師や受診先へ相談してください。

 

8.このような症状は予約日を待たずに受診してください

 

 

次のような場合は、通常の診察予約日まで待たず、医療機関へ連絡してください。

  • 便器が赤くなるほど大量に出血している

  • 血便が何度も続いている

  • めまい、立ちくらみ、冷や汗、動悸がある

  • 意識が遠のく、立っていられない

  • 今まで経験したことがないほど強い腹痛がある

  • おなかが硬く、触れるだけでも強く痛む

  • 嘔吐を繰り返している

  • 高熱や強いだるさを伴っている

  • 真っ黒な便とふらつきがある

  • 血液を固まりにくくする薬を服用している

大量出血や強い腹痛、意識状態の変化などがある場合は、救急車を呼ぶことも検討してください。

急性の消化管出血では、まず血圧や脈拍などの全身状態を評価し、出血量や緊急度を判断することが重要です。

 

9.血便と腹痛があるときに行う検査

 

血便と腹痛があるからといって、すべての方にすぐ大腸カメラを行うわけではありません。

症状の経過や全身状態を確認し、必要な検査を選択します。

血液検査

必要に応じて、貧血の程度、炎症反応、脱水、肝臓・腎臓の状態などを確認します。

便検査

下痢や発熱を伴う場合には、細菌感染や腸の炎症を調べるため、便培養検査や便中カルプロテクチン検査などを行うことがあります。

腹部CT検査

急な強い腹痛がある場合には、虚血性大腸炎、憩室炎、腸閉塞などを確認するため、連携医療機関でCT検査を行うことがあります。

大腸カメラ検査

大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性大腸炎などを確認します。

ただし、腸の炎症が強い時期には、まずCT検査や血液検査を行い、状態が落ち着いてから大腸カメラを行うこともあります。

胃カメラ検査

黒い便、みぞおちの痛み、吐き気などがある場合には、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを調べるため、胃カメラを検討します。

 

10.血便+腹痛がある方は、まず診察をご予約ください

 

 

血便と腹痛があっても、原因が必ず大きな病気というわけではありません。

しかし、症状だけで、

「痔だから大丈夫」

「食べ過ぎただけ」

「少し待てば治るだろう」

と判断することは難しい場合があります。

当院では、血液の色や量、腹痛の場所、下痢や発熱の有無、内服薬、過去の検査歴などを確認し、必要に応じて血液検査、便検査、腹部エコー、胃カメラ、大腸カメラを検討します。

症状が落ち着いており、食事や水分が取れている場合は、まず外来診察をご予約ください。

予約時や問診では、

  • いつから血が出ているか

  • 血液の色と量

  • 腹痛の場所と強さ

  • 下痢、発熱、嘔吐の有無

  • 現在服用している薬

をお伝えいただくと、診察がスムーズです。

血便と腹痛がある場合には、無理に我慢せず、早めにご相談ください。

 

よくある質問 Q&A

 

 

Q1.血便と腹痛がありますが、すぐ大腸カメラを受けられますか?

診察当日に必ず大腸カメラを行うわけではありません。

急な強い腹痛や発熱がある場合には、まず血液検査やCT検査を優先することがあります。大腸カメラを安全に行える状態かを判断し、症状に応じて検査時期を決めます。

Q2.血が少量で一度だけなら、様子を見ても大丈夫ですか?

硬い便の後に少量の鮮血がついた場合など、痔や切れ痔が原因のこともあります。

ただし、腹痛を伴う、血便を繰り返す、下痢や発熱がある、便通が変化した、貧血や体重減少がある場合には、血液量が少なくても受診をおすすめします。

Q3.血便が出たとき、写真を撮っておいた方がよいですか?

可能であれば、便や血液の色・量が分かる写真は診断の参考になります。

無理に保存する必要はありませんが、写真が難しい場合には、「鮮やかな赤」「赤黒い」「真っ黒」「便に混じっている」「紙にだけついた」など、見え方を覚えておいてください。

 

まとめ

 

 

いかがでしたか?

血便と腹痛が同時にみられる場合には、虚血性大腸炎、感染性腸炎、炎症性腸疾患、大腸がん、消化性潰瘍など、さまざまな病気が考えられます。

痔が原因となっていることもありますが、痔だけでは腹痛を説明できない場合があります。

大切なのは、血液の量だけで判断せず、

  • 腹痛の強さ

  • 下痢や発熱の有無

  • ふらつきなどの全身症状

  • 症状が続いている期間

を含めて判断することです。

大量出血、強い腹痛、冷や汗、ふらつき、意識が遠のくなどの症状がある場合は、通常の予約を待たず、救急医療機関を受診してください。

症状が落ち着いている場合でも、血便と腹痛を繰り返している方は外来診察をご予約ください。

ふくい内視鏡・胃腸クリニックでは、症状や経過を確認したうえで、必要な検査を一緒に考えてまいります。

「大腸カメラが必要か分からない」という段階でも大丈夫です。

おなかや便のことで気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

 

参考文献

1. 『炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020 改訂第2版』.南江堂,2020年 

2. 『消化性潰瘍診療ガイドライン2026 改訂第4版』.南江堂,2026年.

3. 大腸癌治療ガイドライン 医師用2026年版 第9版』.金原出版,2026年

4. 患者さんとご家族のための炎症性腸疾患(IBD)ガイド2023』.2023年

この記事を執筆した人

この記事を執筆した人

宇賀治 良平

  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化日本肝臓病学会専門医
  • 器病学会専門医
  • 日本内科学会総合専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本消化器がん検診学会消化器がん検診総合認定医
  • 日本ヘリコバクター学会H. pylori感染症認定医

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