大腸ポリープ:小さいポリープでも切除をする理由。取った方が良いの?経過観察? 〜「小さいから大丈夫」と言い切れない大腸ポリープの話〜
おはようございます。
ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。
みなさま、連休はゆっくりと過ごされましたか?
残る連休もあと1日となりましたが・・最終日もありがたいことに福井は良い天気ですね!
皆様にとって良い休日になりますように。
今回は、大腸カメラを受けた患者さんからよく聞かれる質問、
「小さいポリープでも、取った方がいいんですか?」
についてお話しします。
「小さいものでも、取れるなら取ってほしい」
「将来がんになる可能性があるなら、早めに対応したい」
「せっかく大腸カメラを受けたので、必要なポリープはその場で取ってほしい」
と希望されることが多くあります。
そのお気持ちはとても自然なものです。
大腸カメラは、がんを見つけるだけでなく、がんになる前のポリープを見つけて切除できる検査でもあるからです。
ただし、すべての小さなポリープを必ずその場で切除するわけではありません。
ポリープの大きさ、形、できた場所、表面の模様、患者さんの体調、内服薬、出血リスクなどを確認し、安全に切除できるかどうかを判断したうえで対応します。
結論として、
小さなポリープであっても、将来の大腸がん予防につながる可能性があるものは、適切なタイミングで安全に切除することが大切です。
もちろん、すべての小さな隆起を機械的に取るという意味ではありません。
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1. 大腸ポリープとは?

大腸ポリープとは、大腸の粘膜にできる「いぼ」のような盛り上がりです。
大腸ポリープにはいくつか種類がありますが、特に大切なのが、
腺腫性ポリープです。
この腺腫性ポリープは、大腸がんの前段階と考えられています。
大腸がんの多くは、正常な粘膜からいきなり発生するというよりも、腺腫という良性ポリープを経て、時間をかけてがん化していくと考えられています。
これを「腺腫・がん化説」と呼びます。
つまり、大腸カメラの大きな目的は、
がんを見つけることだけではなく、がんになる前のポリープを見つけて切除すること にあります。
実際、National Polyp Studyでは、大腸内視鏡で腺腫性ポリープを切除することにより、大腸がんの発生が減少することが示されています。
また、長期追跡研究では、腺腫性ポリープの切除が大腸がん死亡の低下にも関連することが報告されています。
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2. 小さいポリープでも切除する理由

a. 小さいうちは見た目だけで将来を完全には判断できないから
大腸ポリープは、大きくなるほどがんを含む可能性が高くなります。
これはとても大事な考え方です。
一方で、小さいポリープだから絶対に安全とは言い切れません。
特に腺腫性ポリープの場合、今は小さくても、数年かけて大きくなり、その一部に異型が強くなったり、がん化したりする可能性があります。
すべての腺腫ががんになるわけではありませんが、腺腫は大腸がんの前がん病変として扱われます。
そのため、将来的なリスクを下げる目的で、切除可能な段階で取ることが大切です。
b. 小さいうちの方が、安全に切除しやすいから
ポリープは、小さいうちであれば、比較的短時間で安全に切除できることが多いです。
近年は、特に小さなポリープに対して、コールドスネアポリペクトミーという方法が広く行われています。
これは、電気を使わずに、スネアという輪っか状の器具でポリープを切除する方法です。
電気を使わないため、深い熱傷が起こりにくく、遅れて出血するリスクを抑えやすい方法とされています。
また、日本消化器内視鏡学会からも、大腸コールドポリペクトミーに関するガイドラインが公開されています。
大きくなってから取る場合は、処置時間が長くなったり、出血や穿孔などのリスクが高くなったり、入院が必要になることもあります。
つまり、
小さいうちに見つけて、小さいうちに安全に切除する
という考え方が大切です。
c. 「見つけた時に取る」ことで、再検査の負担を減らせるから
小さなポリープを見つけたときに、その場で切除できれば、患者さんにとっても大きなメリットがあります。
大腸カメラは、検査そのものだけでなく、
・前日の食事制限
・下剤の内服
・当日の来院時間
・検査への不安
・仕事や予定の調整
など、患者さんにとって負担のある検査です。
もし「小さいから一旦様子を見ましょう」として、後日また大腸カメラをすることになれば、同じ準備をもう一度行う必要があります。
もちろん、ポリープの状態や患者さんの体調によっては、その場で切除しない方がよい場合もあります。
しかし、安全に切除できると判断した場合には、見つけた時に切除することが、患者さんの負担軽減にもつながります。
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3. 小さいポリープは全部取るのですか?

ここは少し大切なポイントです。
小さいポリープ=必ず全部取る
というわけではありません。
たとえば、直腸やS状結腸にある小さな過形成性ポリープのように、がん化リスクがかなり低いと考えられるものもあります。
そのため実際の内視鏡検査では、
・大きさ
・形
・色調
・表面の模様と血管の見え方
・ポリープができた場所
・患者さんの年齢
・抗血栓薬の内服
・既往歴
・検査の目的
などを総合的に見て、切除するかどうかを判断します。
当院でも、単に「あるから取る」のではなく、
取るべきポリープか、経過を見るべきものか、安全に切除できる状態か
を確認しながら対応しています。
4. 小さいポリープを取るメリット

小さいポリープを切除するメリットは、大きく3つあります。
a. 将来の大腸がん予防につながる
大腸がんは、早期に見つければ治療できる可能性が高いがんです。
さらに言えば、がんになる前のポリープを切除することで、がんそのものを予防できる可能性があります。
これが、胃カメラやCT検査などとは少し違う、大腸カメラの大きな特徴です。
大腸カメラは、
見つける検査であり、予防する検査でもある
ということです。
b. 大きくなる前に対応できる
ポリープが大きくなると、切除方法も変わってきます。
小さいポリープであれば日帰りで対応できることが多いですが、大きなポリープやがんが疑われる病変では、内視鏡治療でも高度な手技が必要になったり、病院での治療が必要になったりします。
つまり、小さいうちに見つけることは、
患者さんにとっても体への負担が少ない治療につながる
ということです。
c. 次回検査の間隔を考える材料になる
ポリープを切除すると、その組織を病理検査に提出します。
病理検査では、
・腺腫かどうか
・がんの成分がないか
・異型度がどの程度か
・完全に切除できているか
などを確認します。
この結果によって、次回の大腸カメラをいつ頃行うのがよいかを考えることができます。
日本消化器内視鏡学会からも、大腸内視鏡スクリーニング・サーベイランスに関するガイドラインが公表されています。
「ポリープを取って終わり」ではなく、
病理結果をもとに、次の検査計画を立てること
も大切です。
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4. 反対に、切除しない方がよい場合もあります

大腸ポリープは、見つけたら何でもその場で切除すればよい、というものではありません。
たとえば、
・血液をサラサラにする薬を内服している
・出血リスクが高い
・ポリープが大きい
・がんが疑われる
・安全な切除には専門病院での治療が望ましい
・腸の状態が悪く、処置に適さない
・下剤の状態が不十分で視野が悪い
このような場合には、無理にその場で切除せず、必要に応じて改めて治療方針を相談します。
大切なのは、
「小さいから放置」でもなく、「何でも取る」でもなく、患者さんにとって一番安全で、将来のリスクを下げる方法を選ぶことです。
5. 当院で大切にしていること

当院では、大腸カメラにおいて、
・できるだけ苦痛を少なく
・できるだけ見落としを少なく
・必要なポリープは安全に切除する
・病理結果をもとに次回検査まで考える
ことを大切にしています。
大腸カメラは、ただ「受けるだけ」の検査ではありません。
大腸がんを早く見つけるための検査であり、大腸がんになる前に防ぐための検査でもあります。
小さなポリープをどう扱うかは、将来の大腸がん予防に関わる大切な判断です。
よくある質問 Q&A

Q1. 2〜3mmの小さなポリープでも取る必要がありますか?
必要がある場合があります。
小さいポリープの中にも、腺腫性ポリープが含まれることがあります。
腺腫は大腸がんの前段階と考えられるため、将来のリスクを下げる目的で切除を検討します。
ただし、すべての小さなポリープを必ず取るわけではありません。
場所や見た目、患者さんの状態を確認して判断します。
Q2. 小さいポリープを取ると出血しませんか?
出血の可能性はゼロではありません。
ただし、小さなポリープでは、電気を使わないコールドスネアポリペクトミーなど、安全性に配慮した方法で切除できることが多いです。
特に小さいうちに切除することで、大きくなってからの治療よりも負担を抑えられる可能性があります。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる方や、出血リスクが高い方では、事前に薬の内容や治療方針を確認します
Q3. ポリープを取ったら、もう大腸カメラは受けなくていいですか?
一度ポリープを取っても、今後新しいポリープができることがあります。
そのため、病理結果、ポリープの数、大きさ、種類、過去の検査歴などをもとに、次回検査の目安を決めます。
「ポリープを取ったから終わり」ではなく、
大腸を長く良い状態で守るために、適切な間隔で検査を続けること
が大切です。
まとめ

小さいポリープでも切除する理由は
「将来の大腸がん予防につながる可能性があるから」
です。
大腸ポリープの中には、将来的に大腸がんへ進む可能性があるものがあります。
小さいうちであれば、安全に切除しやすく、患者さんの負担も少なく済むことが多いです。
一方で、すべての小さなポリープを必ず切除するわけではありません。
ポリープの種類や見た目、場所、患者さんの状態を確認しながら、切除するかどうかを判断します。
大腸カメラは、
大腸がんを見つける検査であり、予防する検査でもあります。
便潜血検査で陽性になった方、血便がある方、便通の変化がある方、過去にポリープを指摘された方、ご家族に大腸がんの方がいる方は、一度ご相談ください。
ふくい内視鏡・胃腸クリニックでは、少しでも負担の少ない、安全で精度の高い大腸カメラを目指しています。
参考文献・引用
- Winawer SJ, Zauber AG, Ho MN, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. N Engl J Med. 1993;329:1977-1981.
- Zauber AG, Winawer SJ, O’Brien MJ, et al. Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. N Engl J Med. 2012;366:687-696.
- Ferlitsch M, Hassan C, Bisschops R, et al. Colorectal polypectomy and endoscopic mucosal resection: European Society of Gastrointestinal Endoscopy Guideline. Endoscopy. 2024.
- 大腸ESD/EMRガイドライン 日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol. 61(6), Jun. 2019
- 大腸コールドポリペクトミーガイドライン 日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol. 63(5), May. 2021
- 大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン 日本消化器内視鏡学会雑誌 Vol. 62(8), Aug. 2020


