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大腸ポリープは大腸がんになる? ポリープと大腸がんの関係について、消化器内科専門医が解説します

 

0.はじめに

こんにちは。
ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。

大腸カメラの検査後に、

「大腸ポリープが見つかりました」

とお伝えすると、

「それは、がんということですか?」
「放っておくと、必ず大腸がんになるのでしょうか?」
「小さいポリープなら、取らなくても大丈夫ですか?」

と心配される方が少なくありません。

大腸ポリープと大腸がんには深い関係があります。

しかし、すべての大腸ポリープが大腸がんになるわけではありません。

今回は、大腸ポリープと大腸がんの関係について、ちょっと今回はマニアックな話になりますが・・

できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思っています。。

①「大腸ポリープ」は病名ではなく、形を表す言葉です

 

 

大腸ポリープとは、大腸の粘膜が内側に盛り上がった病変をまとめて表す言葉です。

そのため、「大腸ポリープ」という言葉自体は、良性・悪性を表す病名ではありません。

ポリープの中には、将来大腸がんになる可能性があるものもあれば、がん化する可能性がきわめて低いものもあります。

代表的な大腸ポリープには、次のような種類があります。

腺腫(せんしゅ)

腺腫は、大腸の粘膜をつくる細胞が腫瘍性に増殖してできる、良性の腫瘍です。

大腸カメラで見つかるポリープの中でも代表的なもので、一般的に「大腸がんの前段階」として知られています。

腺腫の一部は、長い時間をかけて、

   腺腫
  ↓
  (増大)
  ↓
早期大腸がん
  ↓
進行大腸がん

という順番で変化していく可能性があります。

このような大腸がんの発生経路をadenoma-carcinoma sequence(「腺腫―がん連続説」)と呼びます。

ただし、すべての腺腫が大腸がんになるわけではありません。

腺腫には、病理組織学的に次のような種類があります。

・管状腺腫
・管状絨毛腺腫
・絨毛腺腫

 

鋸歯状病変(きょしじょうびょうへん)

鋸歯状病変とは、顕微鏡で観察したときに、腺管の形がノコギリの歯のように見えることから名づけられた病変です。

鋸歯状病変には、主に次のようなものがあります。

・過形成性ポリープ
・無茎性鋸歯状病変(SSL)
・鋸歯状腺腫(TSA)

このうち、無茎性鋸歯状病変や鋸歯状腺腫は、大腸がんの前段階の病変である可能性があります。

これは腺腫からがんになる経路とは異なり、serrated neoplasia pathway(「鋸歯状経路」)と呼ばれています。

特に無茎性鋸歯状病変は、右側の大腸にできることが多く、平らで周囲の粘膜と色が似ているため、内視鏡でも見つけにくいことがあり、表面への粘液の付着がきっかけに発見されることもあります。

一見すると目立たない病変でも将来大腸がんへ進む可能性があるため、発見した場合には大きさや形、表面の模様などを確認し、必要に応じて切除します。

過形成性ポリープ

過形成性ポリープは、鋸歯状病変に含まれるポリープの一種です。

直腸やS状結腸など大腸の出口に近い場所にできることが多く、数mm程度の小さな白っぽいポリープとして見つかります。

典型的な小さな過形成性ポリープは、がんになる可能性がきわめて低く、必ずしもすべてを切除する必要はありません。

一方で、過形成性ポリープとがん化する可能性がある無茎性鋸歯状病変は、内視鏡での見た目が似ていることがあります。

特に右側の大腸にあるもの、大きさが目立つもの、典型的な過形成性ポリープとは見え方が異なるものについては、切除して病理検査を行うことがあります。

つまり、過形成性ポリープは基本的には良性ですが、「過形成性ポリープに見えるから、すべて放置してよい」というわけではありません。

場所や大きさ、形を含めて判断することが大切です。

炎症性ポリープ

炎症性ポリープは、大腸の粘膜に炎症が起こり、その粘膜が修復される過程で盛り上がってできるポリープです。

腫瘍細胞が増えてできる腺腫とは異なり、炎症に伴ってできる非腫瘍性のポリープです。

潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸に慢性的な炎症を起こす病気に伴って見つかることがあり、「炎症性偽ポリープ」と呼ばれることもあります。

炎症性ポリープそのものが大腸がんへ変化する可能性は、一般的には低いと考えられています。

ただし、慢性的な大腸炎が長期間続いている患者さんでは、ポリープとは別に、大腸粘膜全体からがんが発生するリスクに注意が必要です。

また、炎症性ポリープが大きい場合や出血の原因になっている場合、腺腫やがんとの区別が難しい場合には、生検や内視鏡切除を行うことがあります。

過誤腫性ポリープ(かごしゅせいポリープ)

過誤腫性ポリープとは、本来その場所に存在する正常な細胞や組織が過剰に増殖してできるポリープです。

代表的なものには、次のようなポリープがあります。

・若年性ポリープ
・Peutz-Jeghers型ポリープ

「若年性」という名前がついていますが、必ずしも子どもだけにできるものではありません。

単発で見つかる若年性ポリープの多くは良性ですが、大きくなると血便や貧血、まれに腸重積などの原因になることがあります。

一方で、過誤腫性ポリープが多数見つかる場合や、若い年齢から繰り返し見つかる場合には、

・若年性ポリポーシス症候群
・Peutz-Jeghers症候群
・その他の遺伝性疾患

などが背景にないかを確認する必要があります。

こうした遺伝性のポリポーシス症候群は大腸だけでなく、胃や小腸、その他の臓器にできるがんのリスクが高くなる場合があります。

そのため、単にポリープを一つ切除するだけでなく、ポリープの数、年齢、家族歴、口の周囲や手足の色素沈着などを確認し、必要に応じて専門的な検査や定期的な経過観察を行います。

 

②ポリープの種類は、病理検査で最終的に判断します

 

 

大腸カメラでは、ポリープの大きさ、色、形、表面の模様、血管の見え方などを観察し、どの種類のポリープであるかを予測します。

しかし、見た目だけでは、腺腫、鋸歯状病変、過形成性ポリープなどの区別が難しいこともあります。

そのため、必要なポリープは内視鏡で切除し、顕微鏡による病理検査を行います。

病理検査によって、

・どの種類のポリープだったのか
・良性か悪性か
・がん細胞が含まれていないか
・細胞の異型がどの程度か
・切除した部分に病変が残っていないか

などを確認します。

大腸ポリープが見つかった場合には、「ポリープがあったかどうか」だけでなく、「どの種類のポリープだったのか」を確認することが、その後の検査間隔を考えるうえでも重要です。

 


③ がんとの関係が強いポリープには特徴があります

 

 

大腸ポリープが将来がんになる可能性は、すべて同じではありません。

一般的には、次のような特徴がある場合に注意が必要です。

・大きさが10mm以上ある
・徐々に大きくなっている
・表面に凹凸や不整がある
・平らに広がっている
・腺腫や鋸歯状病変と考えられる
・病理検査で異型度が高い
・複数のポリープが見つかっている

ただし、小さければ絶対に安全というわけでもありません。

小さなポリープの中にも腺腫や鋸歯状病変が含まれるため、大きさだけで切除の必要性を判断することはできません。

内視鏡での見え方や患者さんの年齢、服用している薬、基礎疾患などを含めて判断します。

 


④ ポリープを切除することは大腸がんの予防につながります

 

 

大腸カメラの大きな特徴は、大腸の中を観察するだけでなく、見つかったポリープを切除できることです。

がんになる前の腺腫や鋸歯状病変を取り除くことで、将来の大腸がんを予防できる可能性があります。

長期的な研究でも、腺腫性ポリープを内視鏡で切除することが、大腸がんによる死亡を減らすことにつながると報告されています。

切除したポリープは病理検査に提出し、

・どの種類のポリープだったのか
・がん細胞が含まれていないか
・腫瘍は取りきれているか
・今後どの程度の間隔で検査が必要か

を確認します。

 


⑤大腸カメラは、「病気を見つけるための検査」であると同時に、「大腸がんを未然に防ぐための治療」でもあります。

 

 

大腸ポリープや早期がんは、症状がないことが多いです。そして多くのポリープは自覚症状がありません。

早期の大腸がんについても、自覚症状がほとんどないケースが多々見られます。

病変が大きくなると、

・便に血が混じる
・便が細くなる
・便秘や下痢が続く
・排便回数が変化する
・腹痛が続く
・貧血を指摘される
・体重が減少する

などの症状が現れることがあります。

しかし、症状が現れてから検査を受けるだけでは、早期発見の機会を逃してしまう可能性があります。

40歳以上の方には、年に1回の便潜血検査が推奨されています。

便潜血検査が1回分でも陽性になった場合は、もう一度便潜血検査を行うのではなく、大腸カメラによる精密検査を受けることが大切です。

 


⑥ ポリープを取った後も、定期的な検査が必要です

 

 

ポリープを切除したからといって、今後まったくポリープができなくなるわけではありません。

以前とは別の場所に、新しいポリープができることがあります。

また、ポリープができやすい体質や生活習慣を持っている方もいます。

次回の大腸カメラの時期は、

・ポリープの数
・大きさ
・病理検査の結果
・切除方法
・切除が完全にできたか
・大腸の中が十分きれいな状態で観察できたか
・大腸がんの家族歴

などをもとに決めます。

「全員が毎年受ける」「一度取れば何年も受けなくてよい」というものではありません。

検査を担当した医師から、次回の検査時期について説明を受けておきましょう。

 


⑦ 当院での大腸ポリープ切除について

 

当院では、大腸カメラの検査中に切除できる大きさや形のポリープであれば、患者さんの状態を確認したうえで、
日帰りでのポリープ切除を行っています。

一方で、

・病変が大きい
・がんが深く入り込んでいる可能性がある
・出血の危険性が高い
・切除に専門的な設備や入院管理が必要である

と判断した場合には、安全性を優先し、対応可能な基幹病院へご紹介します。

「ポリープが見つかったら、必ずその日に切除できる」というわけではありません。

一人ひとりの病変と体調に合わせて、最も安全と考えられる方法をご提案します。

 

よくある質問 Q&A 

 

Q1.大腸ポリープは、すべて大腸がんになるのですか?

すべての大腸ポリープが、がんになるわけではありません。

がん化する可能性が低い過形成性ポリープや炎症性ポリープもあります。

一方で、腺腫や一部の鋸歯状病変は、将来大腸がんへ進む可能性があります。

見た目だけでは最終的な判断が難しいこともあるため、切除したポリープは病理検査で詳しく調べます。

Q2.小さなポリープなら、放置しても大丈夫ですか?

小さなポリープの多くは、すぐに大きな問題を起こすものではありません。

しかし、小さなポリープでも腺腫や鋸歯状病変であることがあり、将来的に大きくなる可能性があります。

切除するか経過観察とするかは、大きさだけでなく、形や表面の模様、できている場所などを含めて判断します。

「小さいから絶対に大丈夫」と自己判断せず、担当医の説明を確認してください。

Q3.ポリープを切除すれば、もう大腸がんにはなりませんか?

ポリープを切除することで、そのポリープからがんが発生する可能性を減らすことができます。

ただし、別の場所に新しいポリープや大腸がんが発生する可能性は残ります。

そのため、切除したポリープの数や大きさ、病理検査の結果に応じて、定期的に大腸カメラを受けることが大切です。

 

まとめ

 

いかがでしたか?

大腸ポリープと大腸がんの関係について、重要なポイントをまとめます。

・すべての大腸ポリープががんになるわけではない
・腺腫や一部の鋸歯状病変は、大腸がんの前段階になる
・小さなポリープでも、大きさだけでは安全とは判断できない
・ポリープを切除することは、大腸がんの予防につながる
・ポリープや早期大腸がんは、症状がないことが多い
・ポリープ切除後も、結果に応じた定期検査が必要

大腸がんは、ポリープの段階で見つけて対応することで、予防できる可能性があるがんです。

便潜血検査で陽性を指摘された方、血便や便通の変化がある方、ご家族に大腸がんや大腸ポリープの方がいる場合は、放置せずにご相談ください。

当院では、検査に伴う負担や不安を少しでも減らせるよう、一人ひとりの状態に合わせて大腸カメラをご提案しています。

「おなかの中からふくいを元気にする。」

これからも、消化器の病気で苦しむ方を少しでも減らせるよう、丁寧な診療と内視鏡検査に努めてまいります。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

 

参考文献

・日本消化器病学会編.大腸ポリープ診療ガイドライン2020 改訂第2版.

・胃と腸 59巻  2号 大腸ポリープのすべて(2024年2月) 

・胃と腸 57巻 10号 大腸腫瘍診療の最前線 (2022年9月) 

 

この記事を執筆した人

この記事を執筆した人

宇賀治 良平

  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化日本肝臓病学会専門医
  • 器病学会専門医
  • 日本内科学会総合専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本消化器がん検診学会消化器がん検診総合認定医
  • 日本ヘリコバクター学会H. pylori感染症認定医

おなかの中からふくいを元気にする。を掲げ毎日の診療にあたっています。
少しでも辛くない検査をより多くの方に届けられるよう、スタッフ一丸となってより良い診療を提供します。