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大切な家族に「一度、受診してほしい」と伝えるために 〜内視鏡検査を勧めるときに大切なこと〜

0.はじめに――自分のことより、家族のことが心配になる

こんばんは。
ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。

今回は、いつもの病気や検査の解説とは少し違うお話をさせていただきます。

診察室では、ときどきご本人ではなく、ご家族からこのようなご相談をいただきます。

「夫が血便を放置しています」
「父が健診で引っかかったのに、病院へ行こうとしません」
「母に大腸カメラを受けてほしいのですが、怖がって聞いてくれません」
「何度言っても、“自分は大丈夫”と言うんです」

大切な家族だからこそ、病気を見逃してほしくない。

しかし、心配する気持ちが強いほど、

「早く病院へ行って」
「どうして検査を受けないの?」
「病気だったらどうするの?」

と、少し強い言い方になってしまうこともあります。

今回は、家族に受診や内視鏡検査を勧めたいとき、どのように伝えると一歩を踏み出してもらいやすいのか、一緒に考えてみたいと思います。

 

1.家族が受診しないのは、健康を軽く考えているからとは限りません

 

 

受診や検査を勧めても動いてくれないと、

「自分の体を大切にしていない」
「家族の心配を分かってくれない」

と感じてしまうかもしれません。

しかし、受診できない背景には、さまざまな理由があります。

「もし、がんが見つかったら怖い」
「以前の検査がつらかった」
「下剤を飲むのが大変そう」
「恥ずかしい」
「仕事を休めない」
「家族に迷惑をかけたくない」
「症状が軽いから、まだ大丈夫だと思う」

受診しない人が、何も感じていないとは限りません。

むしろ、怖いからこそ考えないようにしていることもあります。

最初から検査の必要性を説明するよりも、まずは、

「何が一番心配?」
「検査のどの部分が嫌なの?」

と聞いてみることが大切です。

理由が分かれば、解決できる問題が見つかるかもしれません。

 

2.「症状がないから大丈夫」とは限りません

 

 

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないことがあります。

症状が出てから受診しようと思っていても、早期の段階では血便や腹痛などが現れない場合があるのです。
国の指針では、症状のない40歳以上の方に対して、年1回の便潜血検査による大腸がん検診が勧められています。

ただし、すべての方が最初から大腸カメラを受けなければならない、という意味ではありません。

症状のない方は、まず毎年の便潜血検査を受けることが基本です。

一方で、便潜血検査が陽性だった方、血便や排便の変化がある方、過去に大腸ポリープを切除した方などは、大腸カメラを検討した方がよい場合があります。

大切なのは、家族だけで検査の必要性を決めるのではなく、まず医療機関で相談することです。

 

3.「検査を受けて」ではなく、「まず相談だけしてみない?」と伝える

 

 

大腸カメラに抵抗がある方へ、いきなり

「大腸カメラを予約しよう」

と伝えると、気持ちが追いつかず、かえって拒否されてしまうことがあります。

そのような場合は、

「検査を受けるかどうかは、先生と話してから決めたらいいよ」
「まず相談だけして、必要なければ受けなくてもいいんじゃない?」
「今の症状を一度聞いてもらおう」

と伝えてみてください。

受診したからといって、その日に必ず大腸カメラを受けなければならないわけではありません。

医師が症状、年齢、既往歴、家族歴、過去の検査結果、内服薬などを確認したうえで、必要な検査と時期を判断します。

「検査を受ける」という大きな一歩ではなく、まず「相談する」という小さな一歩に変えることで、受診への抵抗感が少なくなることがあります。

 

4.家族に伝えるときは、「怖がらせる」よりも「安心を確認する」

 

 

家族を動かそうとして、

「がんかもしれないよ」
「手遅れになったらどうするの」
「知り合いも放置して大変だった」

と伝えたくなる気持ちは分かります。

しかし、恐怖を強く感じると、かえって検査から目を背けてしまう人もいます。

次のような言葉に置き換えてみてはいかがでしょうか。

「何もなければ、それが一番安心だから一度確認しよう」
「悪い病気を探すというより、大丈夫だと確認するために受診しよう」
「早めに相談して、何もなければ安心して過ごせるよ」
「一人で行くのが心配なら、一緒に行くよ」

「病気を見つけるため」だけではなく、「安心を確認するため」という伝え方もあります。

 

 

5.状況別の声のかけ方

 

血便がある場合

「痔かもしれないけれど、見た目だけでは原因が分からないみたいだよ。一度だけでも相談してみない?」

血便は痔でも起こりますが、大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患などでもみられます。

「痔だと思う」と自己判断せず、医療機関で原因を確認することが大切です。

便潜血検査が陽性だった場合

「陽性だから、がんと決まったわけではないよ。でも、原因を確認するところまでが大切だよ」

便潜血検査の陽性は、大腸がんの確定診断ではありません。

しかし、2日分のうち1回だけの陽性でも、精密検査を受けることが勧められています。便潜血検査をもう一度受け直して陰性だったとしても、最初の陽性が取り消されるわけではありません。

「症状がないから大丈夫」と言われた場合

「症状がない人のために検診があるみたいだよ。まず今年の便潜血検査だけでも受けてみない?」

症状のない40歳以上の方は、年1回の便潜血検査が基本です。

検査の結果やこれまでの病歴によっては、医師から大腸カメラを提案されることがあります。

過去の大腸カメラがつらかった場合

「前回つらかったことを最初に先生に伝えて、今回はどうすれば負担を減らせるか相談してみよう」

大腸の形や手術歴、便秘の程度などにより、検査の負担には個人差があります。

前回の検査でつらかったことや下剤で困ったことを事前に伝えることは、とても大切です。

検査方法や前処置について、本人に合った方法を相談できる場合があります。

 

6.言葉だけでなく、「受診しやすい環境」を一緒につくる

 

家族が受診しない理由は、怖さだけではありません。

予約方法が分からない、仕事との調整が難しい、検査日に家を空けにくいなど、現実的な問題が隠れていることもあります。

そのような場合は、

  • 医療機関の候補を一緒に調べる
  • 受診できそうな日を一緒に考える
  • 健診結果やお薬手帳を準備する
  • 医師に聞きたいことを書き出しておく
  • 本人が希望すれば受診に付き添う
  • 検査日に必要な家事や送迎を分担する

といった支えが役立ちます。

「病院へ行ってきて」と送り出すだけでなく、

「受診しやすいように、できることは手伝うよ」

と伝えてみてください。

家族のひと言だけでは動けなかった方が、予約日を一緒に決めたことで受診できることもあります。

 

 

7.次の症状があるときは、先延ばしにせず受診を勧めてください

 

次のような症状がある場合は、次回の健康診断を待たず、消化器内科などの医療機関へ相談してください。

  • 血便や黒い便が出る
  • 便秘や下痢が続いている
  • 便が以前より細くなった
  • 排便しても便が残っている感じがする
  • 腹痛やおなかの張りが続く
  • 原因の分からない貧血を指摘された
  • 食欲低下や体重減少がある
  • 吐き気や嘔吐を伴う
  • 便潜血検査で陽性を指摘された

大腸がんでは、血便、便通の変化、細い便、残便感、貧血、腹痛、腹部膨満感などがみられることがあります。

血便や腹痛、排便回数・便の性状の変化がある方は、「検診」ではなく医療機関を受診することが勧められています。

大量の血便、強い腹痛、冷や汗、ふらつき、意識が遠のく、便やガスが出ず嘔吐するなどの症状がある場合は、通常の予約を待たず、救急医療機関への相談が必要です。

 

8.大腸カメラは「見るだけ」の検査ではありません

 

 

大腸カメラでは、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の粘膜を直接観察します。

病変が見つかった場合には、必要に応じて組織を採取して詳しく調べたり、大きさや形によってはポリープを切除したりすることもできます。

もちろん、大腸カメラには前処置や身体的な負担があり、すべての方に同じように行う検査ではありません。

だからこそ検査の必要性、受けることで分かること、負担やリスクについて説明を受け、ご本人が納得したうえで決めることが大切です。

家族としてできることは、無理に受けさせることではなく、正しい情報を得られる場所まで一緒に歩くことなのだと思います。

 

 

9.一度断られても、関係を悪くしないことを優先する

 

 

 

何度勧めても、すぐには受診してくれないこともあります。

そのようなときに毎日繰り返し言ったり、責めたりすると、受診の話題そのものを避けるようになってしまうことがあります。

一度伝えたあとは、

「すぐに決めなくてもいいけれど、私は心配しているよ」
「受けようと思ったときは、いつでも手伝うよ」
「また少し時間を置いて相談させてね」

と伝え、少し時間を置くことも一つの方法です。

ただし、血便や強い腹痛、体重減少、貧血、便潜血陽性など、医学的に放置しない方がよい状況では、なぜ受診が必要なのかを落ち着いて繰り返し説明してください。

必要であれば、かかりつけ医や健診を担当した医療機関から、本人へ直接説明してもらう方法もあります。

 

 

10.医師から、ご家族へお伝えしたいこと

 

 

家族に病院へ行ってもらうことは、簡単ではありません。

「心配しているのに伝わらない」
「もっと強く言った方がよいのだろうか」
「嫌われても連れて行くべきだろうか」

と悩む方もいらっしゃると思います。

しかし、大切なのは、完璧に説得することではありません。

「あなたに元気でいてほしい」
「何もなければ、一緒に安心したい」
「困ったときは手伝う」

その気持ちを、相手を責めない言葉で伝えることだと思います。

検査を受ける勇気がまだ持てない方も、まずは診察を受けて、疑問や不安を医師に話すことから始めていただければと思います。

 

よくある質問 Q&A

 

 

Q1.症状がなくても、大腸カメラを受けた方がよいのでしょうか?

症状のない40歳以上の方は、まず年1回の便潜血検査を受けることが基本です。

便潜血陽性、過去の大腸ポリープ、大腸がんの家族歴、これまでの検査結果などによっては、大腸カメラを検討する場合があります。

全員が同じ間隔で大腸カメラを受けるわけではありませんので、医師へご相談ください。

 

Q2.家族が「大腸カメラは痛いから嫌だ」と言っています。どうすればよいですか?

まず、過去の検査で何がつらかったのかを聞いてみてください。

内視鏡を入れるときの痛みなのか、下剤なのか、検査結果への不安なのかによって対応が異なります。

前回つらかったことを診察時に伝え、負担を減らす方法について相談するよう勧めてみてください。

 

Q3.便潜血検査が2回中1回だけ陽性でした。もう一度検便をして陰性なら大丈夫ですか?

便潜血検査は、2回中1回だけでも陽性であれば精密検査の対象となります。

便潜血検査を繰り返して陰性になっても、最初の陽性結果を否定することはできません。

自己判断で様子を見ず、大腸カメラなどの精密検査について医療機関へご相談ください。

 

まとめ

 

 

いかがでしたか?

大切な家族に受診や内視鏡検査を勧めるときは、正しさだけを伝えるのではなく、その方が何を怖いと感じ、何を負担に思っているのかを知ることが大切です。

「検査を受けて」と迫るのではなく、

「まず相談だけしてみない?」
「何もないことを確認しよう」
「一人で不安なら一緒に行くよ」

と伝えてみてください。

受診するかどうか、どの検査が必要かは、医師と相談してから決めることができます。

ふくい内視鏡・胃腸クリニックでは、症状や健診結果、過去の検査歴を確認したうえで、必要な検査を一緒に考えてまいります。

「家族に大腸カメラを受けてほしいけれど、必要か分からない」という段階でも構いません。

まずはご本人と話し合い、受診への小さな一歩につなげていただければと思います。