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便潜血検査って何を調べているの? 〜大腸がん検診をわかりやすく解説〜

こんばんは。ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。

皆様は体調を崩さずお過ごしでしょうか。

 

インフルエンザもようやく収束に向かっているかと思います。ありがたいことです。

さて、今回は健康診断や市町村のがん検診で行われる「便潜血検査」についてです。

 

名前は聞いたことがあっても、

  • 何を調べているの? 陽性や陰性って、どこまで信用していいのか?

と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

 

ここでは、便潜血検査の目的と仕組み、そして結果の正しい受け止め方について、できるだけわかりやすく説明します。

 

① 便潜血検査とは?

 

 

便潜血検査は、便の中に混ざっている“目に見えない微量の血液”を調べる検査です。

現在、日本で広く使われているのは
FIT(免疫化学的便潜血検査) という方法で、便の中の「ヒト由来ヘモグロビン」に反応する仕組みになっています。

つまり、

👉 腸のどこかで出血が起きていないか

を調べている検査です。

②なぜ便の中にある「血」を調べるの?

 

 

便の中に潜む血液の有無を調べる。つまり

便潜血検査は肉眼では見えない出血を拾い上げることで、

  • 大腸がん

  • 進行したポリープ

などを症状が出る前の段階で見つけることができうるためです。

大腸がんや大腸ポリープができると、それらは表面がもろく、便が通過する際にごく少量の出血を起こすことがあります。
その血液は目で見ても分からない量で、便に混ざって排出されます。

そして、もう一つお伝えしたいこととして、

陽性の原因はがんだけではありません。

  • 腸の炎症

  • 良性ポリープ

などでも陽性になることがあります。

そのため、便潜血検査は

診断を確定する検査ではなく、「精密検査が必要かどうかを振り分ける検査」

という位置づけになります。

③検査はどうやって行うの?

 

多くの場合、

  1. ①自宅で便を採取

  2. ②容器に入れて提出

  3. ③検査機関で分析

という流れです。

当院においても「市の大腸がん検診」も行っており、当院の受付を窓口として、検査機関へ提出をしております。

通常は2日分の便を提出します。
これは「たまたま出血をしていない日」を減らすことで、見逃しを減らすためです。
1回提出だけする方法よりも、より検出率が高くなります。

「体への負担がほぼなく、自宅で手軽に検査ができる」
これが便潜血検査が世界中で使われている大きな理由です。

 

④結果の基本的な見方

 

 陰性

便の中に血液が検出されなかった状態です。
大腸がんの可能性は低いと考えられます。

ただし、

👉 陰性=絶対に異常がない

ではありません。

出血していないタイプのがんや、がんが小さい場合に便と擦れることがなかった、などの問題で見逃されることもあります。
そのため、毎年くり返し受けることがとても大切です。


陽性

便の中に血液が検出された状態です。

あらかじめお伝えしますが、これは 「がんの確定」 ではありません。

多くの場合は良性の原因ですが、
大腸がんや進行ポリープが隠れている可能性もあるため、大腸内視鏡などの精密検査が必ず必要になります。

また、女性の場合は、生理中の採便をなるべく避けてください。

生理中に便の採取を行い、陽性になった場合には医療機関にその旨もお伝えください。

 

⑤便潜血検査(FIT)の精度

対策型(市町村)大腸がん検診における便潜血検査はですが、厚生労働省から公的資料として公表されているデータは以下のようなものがあります。

感度

「実際に大腸がんがある人を、どれくらい陽性として拾えるか」という意味。

→ おおよそ 80%


 

特異度

「大腸がんがない人を、正しく陰性と判定できる割合」

→ おおよそ 90%

(カットオフ値=100ng/mLとした場合のデータ) 
*日本の自治体検診でよく使われる標準的な基準値

 

これらの確率は、

どのくらいの精度で便潜血検査を陽性として判断するか(=カットオフ値、といいます)

によっても決まりますが、あくまでも研究データとして読み解くのが良いと思われます。

 

⑥大切なポイント

 

少し難しい話になってしまいましたが、これらの数字から分かるのは、

  • ・陰性なら安心度はかなり高い。でも「100%」ではない


  • ・陽性でも多くはがんではない

  •  
  • :だから精密検査が必要

ということです。

便潜血検査はとても優秀ですが、万能ではありません。

だからこそ、

  • 😃  毎年きちんと受ける

  • 😃  陽性を放置しない

この2つが重要になります。

 

よくある質問(Q&A)

Q1. 陰性なら、もう大丈夫?

完全ではありません。
陰性でもまれに病変が隠れていることがあります。
便潜血検査を継続していただくことと、症状があれば結果に関係なく受診しましょう。


Q2. 陽性=がんですか?

必ずしもそうではありません。
多くは痔や良性ポリープなどが原因でう陽性となっているケースが多いです。
しかし、がんが含まれる可能性もあるため、便潜血検査が陽性になった場合には精密検査を受けるかどうか、まずはご相談をなさってください。


Q3. なぜ毎年受ける必要があるの?

 

ここで、便潜血検査を毎年受けるべき理由について、いかに列挙します。

① 出血は「いつも出ている」とは限らない

大腸がんやポリープからの出血は、

  • 出る日もあれば、出ない日もあります。

つまりは、がんがあってもその年の検査では血が混じらないことがあるのです。

👉 毎年くり返すことで
「たまたま出血していない年」をカバーできます。

② 便潜血検査は「一度で完全に見つける検査」ではない

便潜血検査は、

  • がんを疑う人を広く拾い上げる

  • 本当に詳しく調べる人を選ぶ

ためのふるい分け検査です。

1回で100%見つかる検査ではありません。
回数を重ねることで、全体としての見つかりやすさが上がる検査です。

③ 大腸がんは「時間をかけて進行する」

多くの大腸がんは、

  • 数年かけて ポリープ から がん へと進行します

毎年検査を受けていれば、

  • 小さい段階で見つかる=内視鏡治療、もしくは手術で治る可能性がある。

 便潜血検査は、命を守るための「時間的な見張り」になります。

④ 毎年受けることで、検診の効果が出ると分かっている

便潜血検査は、

  • 毎年、または隔年で継続した人ほど

  • 大腸がんで亡くなる人が少ない

ことが、国内外の研究で確認されています。

「受けたり受けなかったり」より、継続すること自体が大きな意味を持ちます。

 

まとめ

便潜血検査は、

  • 体への負担が少なく

  • 陰性なら安心度が高く

  • 早期発見につながる

とても大切な検査です。

一方で、100%の精度ではありません。

だからこそ
👉 定期的に受ける
👉 陽性時は必ず精密検査

この2つが、将来の大きな病気を防ぐ鍵になります。

  • 費用が安い(多くの自治体で数百円〜無料) ので、金銭的な面からも負担が少なく、定期的に受けられます。

気になった際には、どうぞお気軽にご相談、ご質問くださいね。

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 

参考文献(医学論文)

  1. Lee JK et al. Accuracy of fecal immunochemical tests for colorectal cancer. Ann Intern Med. 2014.

  2.  
  3. Westwood M et al. Faecal immunochemical tests to triage patients with lower gastrointestinal symptoms for colorectal cancer investigation. Health Technol Assess. 2017.

  4.  
  5. Turvill J et al. Diagnostic accuracy of FIT in symptomatic patients in primary care. Br J Cancer. 2021.

  6.  
  7. Saw KS et al. Faecal immunochemical testing to detect colorectal cancer in high-risk patients. World J Gastroenterol. 2023.

  8. 大腸がん検診 マニュアル ―2021 年度改訂版― 日本消化器がん検診学会雑誌 Vol.60(3), May. 2022

この記事を執筆した人

この記事を執筆した人

宇賀治 良平

  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化日本肝臓病学会専門医
  • 器病学会専門医
  • 日本内科学会総合専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本消化器がん検診学会消化器がん検診総合認定医
  • 日本ヘリコバクター学会H. pylori感染症認定医

おなかの中からふくいを元気にする。を掲げ毎日の診療にあたっています。
少しでも辛くない検査をより多くの方に届けられるよう、スタッフ一丸となってより良い診療を提供します。