便潜血が陰性でも安心できないの?大腸がんの検出はちゃんとできている?〜理由をわかりやすく解説〜
ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。
少しずつ暖かくなってきましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
新生活がそろそろ始まる方も多いかと思います。
体調に気をつけてお過ごしくださいね。
さて、本日は再度便潜血検査についてのお話です。
健康診断で便潜血検査を受けた後、「陰性だったから大丈夫!」と思っている方は少なくないと思います。
便潜血検査は大腸がんのスクリーニングとして広く使われている検査ですが、
陰性=「がんが絶対にない」という意味ではありません。
前回は、陽性だった時にどうするか、というお話をしていましたが。今回は便潜血検査が陰性だった時のお話です。
その理由について、専門的な視点からできるだけ分かりやすく解説します。
①そもそも、便潜血検査って何?

以前の繰り返しにはなりますが、
便潜血検査とは、
便の中に目に見えない「微量の血液(潜血)」が含まれているかを調べる検査です。
腸のどこかで出血が起きている可能性を調べるもので、
大腸がんや大腸ポリープのスクリーニング検査として健康診断や自治体の検診でよく使われています。
ただし、便潜血検査には、検査の特性上の限界があります。
② 便潜血検査には限界がある

出血がない病変は反応しない
便潜血検査は「便に血液があるかどうか」を調べる検査です。
つまり
出血していない腫瘍やポリープには、そもそも反応しません。
そのため、
-
出血していない早期の大腸がん
-
出血が少ないポリープ
などは、検査をしても陰性になることがあります。
これは検査の性質上、避けられない限界です。
病変は存在していても、「たまたま便潜血検査を提出した際には出血をしていなかった」という場合には
残念ながら病変は見逃されてしまいます。
陰性でも見逃しがある
多くの調査で、便潜血検査が陰性でも腫瘍が見逃されることが報告されています。
ある研究では、便潜血検査が陰性にもかかわらず、
大腸がんが存在していた例が多数報告されています。
また、検査方法によっては感度(見つける力)が大きく変わることも分かっています。
-
一般的な便潜血検査では、
-
進行がんでも 陽性になる確率は約80〜90%(進行がんのうち、1-2割が便潜血検査で反応しない)
-
早期がんでは 50%前後にとどまる という報告もあります。(早期癌の半分が見逃されてしまう)
そして、病変の位置によっても検出のしやすさが異なっており、特に右側結腸(右側の大腸)では、
便がまだ固くなる前であり擦れて出血しづらい、
腸内細菌によって血液が分解をされてしまう
などの理由によって、便潜血検査での検出がしづらいと考えられてます。
繰り返すようですが、陰性=“がんが存在しない”ではなく、
「出血していないがんや小さな病変は見逃す可能性がある」ということなのです。
採便や検査条件の問題
便潜血検査は自宅で便を採取して提出する形式のため、
採便方法や保存状態で結果が左右されることがあります。
これにより、本来は出血があるはずなのに検査で反応しない「偽陰性」になるケースもあります。
③ どんなときに注意が必要?

便潜血検査が陰性だったから安心…とは限りません。
特に次のような場合には注意が必要です。
症状がある場合
以下のような症状がある場合には、検査が陰性でも医療機関を受診し、診察を受けたほうがいいケースがあります。
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🟡 血便や黒い便が出ている場合
-
🟡 腹痛や便の様子の変化(便が細くなるなど) -
🟡 鉄欠乏性貧血・体重減少
これは検診を受けることとは別に、「診療として相談・判断すべきサイン」です。
仮に大腸がん検診の結果が陰性であったとしても、
それを鵜呑みにせず症状をきちんと伝えるような受診をなさってください。
④ よくある質問 Q&A

Q1. 便潜血検査の精度をできるだけ高める方法はありますか?
便潜血検査はあくまでも「出血の有無」を調べる検査であり、完全に見逃しをなくすことはできません。
ただし、検査の受け方によっては検出率を高めることは可能です。
特に重要なのは以下の点です。
-
🟡 2日法をきちんと提出すること
日本では2日法が標準的に行われています。
複数日に分けて採取することで、偶然出血がなかった日だけを拾ってしまうリスクを減らします。 -
🟡 採便方法を守ること
便の表面をまんべんなく採取し、指定どおり保管・提出することが大切です。 -
🟡 毎年継続すること
1年の陰性だけで終わらせることなく、定期的に受け続けることが将来的な大腸がんのリスク低減につながります。
どうしても、検査の限界はありますが「正しく・継続して」受けることが最も現実的な精度向上策です。
Q2. 若い世代なら、陰性結果で安心してもよいのでしょうか?
若年層では大腸がんの頻度は高くありませんが、「若いから発症はしない」というわけではありません。
50歳未満の方でも大腸がんは発症します。症状がある場合は年齢に関係なく医療機関の受診が望ましいです。
特に以下の症状がある場合は、検診結果に関わらず医療機関での評価が望まれます。
-
・目に見える血便
-
・原因不明の貧血
-
・便が細くなる、回数が変わるなどの持続する便通異常
便潜血検査は無症状者向けの検診です。症状がある場合は「保険診療」の対象になります。
Q3. 何年も便潜血が陰性なら、リスクはかなり低いと考えてよいですか?
長期間にわたって陰性が続くことは、統計的にはリスクが比較的低い可能性を示します。
ただし、リスクが完全にゼロになるわけではありません。
検診には「中間期がん」という概念があり、前回陰性であっても、次回検診までの間にがんが見つかることがあります。
そのため重要なのは、
-
定期的に検診を継続すること
-
体調の変化を軽視しないこと
です。
陰性結果は安心材料のひとつではありますが、「絶対に安全」という意味ではないことを理解しておくことが大切です。
⑤ まとめ

便潜血検査は大腸がんスクリーニングとして多くの患者さんに対して役立つ検査ではありますが、
🟡 陰性でも大腸がんがないとは言い切れない
🟡 初期の病変や出血の少ない病変は反応しないことがある
🟡 採便方法や条件によって結果が変わることがある
このように、陰性だからといって安心しすぎないことが大切です。
参考文献
有効性評価に基づく 大腸がん検診ガイドライン 2024 年度版, 国立がん研究センター がん対策研究所
大腸がん検診 マニュアル ―2021 年度改訂版
免疫便潜血検査における偽陰性大腸癌の検討. 2012. 日本消化器がん検診学会雑誌.


