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健康診断で「貧血」を指摘されたら?胃や大腸を調べることがある理由 消化器内科医が解説

0.はじめに

こんにちは。ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。

本日未明は福井市内でも非常に強い雨となりました。被害に遭われた皆さまが、一日も早く普段の生活に戻られることを願っております。

 

8月も終わりに近づき、少しずつ秋の健康診断や検診の結果を確認する機会も増えてくる時期ですね。

今回は、その中でも「貧血」についてお話しします。

検診や健康診断の血液検査で、

「ヘモグロビンが低いですね」

「貧血があります」

と言われたことはありませんか?

「少し鉄分が足りないだけかな」

「特に症状もないから、そのままでいいかな」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、貧血には食事や月経などが関係している場合もあります。

一方で、胃や大腸から少量の出血が続くことで、貧血が最初のサインとして見つかることもあります。

今回は、検診で貧血を指摘されたときに何を確認したらよいのか、そしてどのような場合に胃や大腸を調べることがあるのかを、できるだけ分かりやすく解説します。

 

1.「貧血」と言われても、原因はひとつではありません

 

 

貧血とは、血液の中で酸素を運んでいる「ヘモグロビン」が少なくなった状態です。

貧血になると、

  • 疲れやすい
  • 息切れがする
  • 動悸がする
  • 立ちくらみがする
  • 顔色が悪いと言われる

などの症状が出ることがあります。

ただし、ゆっくり貧血が進んだ場合には、体がその状態に慣れてしまい、ほとんど自覚症状がないこともあります。

また、「貧血」と一言でいっても、原因はさまざまです。

  • 鉄が不足している
  • ビタミンなどが不足している
  • 腎臓や慢性の病気が関係している
  • 血液そのものの病気がある
  • どこかから慢性的に出血している

などがあります。

そのため、検診で「貧血」と書かれていたからといって、すぐに「鉄分をとれば大丈夫」と考えるのではなく、まずどのような貧血なのかを確認することが大切です。

 

2.消化器内科で特に確認したい「鉄欠乏性貧血」

 

 

貧血の中でもよくみられるもののひとつが、鉄欠乏性貧血です。

鉄は、ヘモグロビンを作るために必要な材料です。

体の中の鉄が不足すると、十分なヘモグロビンを作れなくなり、貧血につながります。

ただし、「なぜ鉄が足りなくなったのか」を考えることが重要です。

鉄欠乏の原因としては、

  • 食事からとる鉄が不足している
  • 月経によって鉄を失っている
  • 妊娠などで鉄の必要量が増えている
  • 消化管で鉄を十分吸収できていない
  • 胃や腸などから慢性的に出血している

などがあります。

血液検査では、ヘモグロビンだけでなく、赤血球の大きさや、体の中にどのくらい鉄が蓄えられているかを示す「フェリチン」などを確認しながら、鉄欠乏があるかどうかを判断します。

 

3.なぜ胃や大腸の病気で貧血になるの?

 

 

「胃や大腸の病気なら、血便が出るのでは?」

と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、消化管からの出血は、必ずしも目で見えるほどの量とは限りません。

例えば胃や腸の病変から、ごく少量の出血が長期間続いている場合、便を見ても血液には気づかないことがあります。

それでも、少しずつ鉄が体の外へ失われ続けることで、やがて鉄欠乏性貧血として血液検査に現れることがあります。

つまり、

「血便がない=胃や腸から出血していない」とは限らない

ということです。

実際に、胃や腸など消化管にできた病気からの出血が、貧血の原因になることがあります。

 

4.貧血の原因になることがある胃・腸の病気

 

 

消化管からの慢性的な出血によって鉄欠乏性貧血を起こす病気には、さまざまなものがあります。

例えば、

  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
  • 胃の炎症やびらん
  • 胃がん
  • 大腸がん
  • 炎症性腸疾患など大腸の炎症
  • その他、消化管から出血する病気

などが考えられます。

もちろん、貧血を指摘されたからといって、胃がんや大腸がんという意味ではありません。

大切なのは、原因が分からないまま「鉄分不足だろう」と決めつけないことです。

特に鉄欠乏性貧血が続いている場合や、一度改善してもまた繰り返す場合には、「なぜ鉄が減っているのか」を確認することが大切です。

 

5.どんな場合に胃カメラ・大腸カメラを考える?

 

 

貧血があるからといって、すべての方に胃カメラや大腸カメラが必要というわけではありません。

年齢、性別、月経の有無、貧血の程度、これまでの経過、症状、内服薬などを確認したうえで判断します。

特に、男性や閉経後の女性で、原因のはっきりしない鉄欠乏性貧血がみられる場合には、胃と大腸の両方に出血の原因がないか調べることが重要とされています。

また、性別や年齢にかかわらず、

  • 鉄欠乏性貧血を繰り返している
  • 鉄剤を使用しても十分改善しない
  • 血便や黒い便がある
  • 腹痛が続いている
  • 便通が以前と変わった
  • 食欲低下や体重減少がある

といった場合には、消化管の検査を検討することがあります。

胃カメラでは食道・胃・十二指腸を、大腸カメラでは大腸を直接観察することができます。

 

6.月経のある女性では、胃腸以外の原因も大切です

 

 

特に月経のある女性では、月経による出血が鉄欠乏性貧血の大きな原因になることがあります。

月経量が多い、月経期間が長いといった場合には、子宮筋腫など婦人科の病気が関係していることもあります。

そのため、女性の鉄欠乏性貧血をすべて「胃や大腸の病気」と考えるわけではありません。

一方で、月経があるからといって消化管の病気が絶対にないとも言い切れません。

貧血の程度が強い、繰り返している、胃腸症状を伴う、年齢や経過から他の原因も考える必要がある場合などには、婦人科的な原因と消化管の原因の両方を考えていきます。

 

7.消化器内科ではどのように確認する?

 

 

検診で貧血を指摘された場合、まず結果の用紙を持って医療機関へご相談ください。

消化器内科では、

  • 以前から貧血があったのか
  • ヘモグロビンはどの程度低いのか
  • 鉄欠乏があるのか
  • 月経やその他の出血がないか
  • 胃痛、腹痛、血便、黒い便などがないか
  • 便通や体重に変化がないか
  • 服用している薬は何か

などを確認します。

そのうえで必要に応じて追加の血液検査を行い、胃や大腸に原因が疑われる場合には、胃カメラや大腸カメラを検討します。

「貧血だから、すぐに内視鏡」ではなく、まず貧血の種類と原因を整理したうえで必要な検査を選ぶことが大切です。

 

8.こんな症状を伴うときは早めに相談を

 

 

 

貧血を指摘された方の中でも、次のような症状がある場合には、早めに医療機関へ相談してください。

  • 真っ黒な便が出る
  • 目で見て分かる血便がある
  • 腹痛が続いている
  • 食欲が低下している
  • 意図せず体重が減っている
  • 便秘や下痢など便通が大きく変わった
  • 動悸や息切れが強い
  • 立っていられないほどのふらつきがある

特に、大量の出血、黒い便に加えて強いふらつきや冷や汗がある、息苦しい、意識が遠のくといった症状がある場合には、通常の外来予約を待たず、救急医療機関への相談が必要になることがあります。

症状がなくても、貧血が繰り返している場合や原因がはっきりしない場合には、そのままにせず一度相談してくださいね。

 

よくある質問 Q&A

 

 

Q1.貧血を指摘されたら、大腸がんということですか?

いいえ。貧血の原因はさまざまで、鉄の摂取不足、月経、慢性疾患などもあります。ただし、大腸などからの慢性的な出血が原因となることもあるため、原因を確認することが大切です。

Q2.貧血だけで大腸カメラを受けることはありますか?

あります。特に原因のはっきりしない鉄欠乏性貧血では、年齢・性別・症状などによって大腸カメラを検討する場合があります。男性や閉経後女性では、胃と大腸の両方を調べることが勧められる場合があります。

Q3.血便がなくても胃や大腸から出血していることはありますか?

あります。少量の出血が長く続く場合、便を見ても血液に気づかず、血液検査の貧血が最初のきっかけになることがあります。

Q4.鉄剤を飲んで貧血が治れば、原因を調べなくてもいいですか?

貧血が改善することは大切ですが、それだけで原因が分かったことにはなりません。特に原因不明の鉄欠乏性貧血や、治療後に再び貧血になる場合には、「なぜ鉄が不足したのか」を確認することが大切です。

Q5.検診結果の用紙だけ持って受診しても大丈夫ですか?

はい。過去の健康診断や血液検査の結果があれば、以前からの変化を確認するためにも役立ちます。可能であれば今回だけでなく、過去の結果も一緒にお持ちください。

 

まとめ

 

 

今回は、検診で貧血を指摘されたときの考え方についてお話ししました。

  • 貧血にはさまざまな原因があり、貧血=鉄不足とは限らない
  • 鉄欠乏性貧血では「なぜ鉄が不足したのか」を確認することが大切
  • 胃や大腸からの少量の出血が続き、貧血につながることがある
  • 血便がなくても消化管からの出血を完全には否定できない
  • 男性や閉経後女性の原因不明の鉄欠乏性貧血では、胃・大腸の検査を検討することがある
  • 月経のある女性では婦人科的な原因なども含めて考える
  • 貧血を治すだけでなく、原因を確認することが大切

「少し貧血なだけだから」とそのままにしている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、貧血はときに、体の中で起きている変化を教えてくれるサインになります。

もちろん、貧血があるからといって大きな病気があるとは限りません。

大切なのは、必要以上に怖がることではなく、「なぜ貧血になったのか」を一度確認することです。

検診で貧血を指摘されたけれど、どこに相談すればよいか分からない方や、胃や大腸を調べた方がよいか迷っている方は、消化器内科へご相談ください。

 

おなかの中からふくいを元気にする。

これからも、皆さんがご自身の体を正しく理解するためのお手伝いができればと思います。

 

参考文献・参考情報

  • 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄欠乏性貧血の診療指針 第1版」2024年
  • American Gastroenterological Association. Gastrointestinal Evaluation of Iron Deficiency Anemia. 2020.
  • British Society of Gastroenterology. Guidelines for the Management of Iron Deficiency Anaemia in Adults. Gut. 2021.
  • 国立がん研究センター がん情報サービス「貧血」

この記事を執筆した人

この記事を執筆した人

宇賀治 良平

  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化日本肝臓病学会専門医
  • 器病学会専門医
  • 日本内科学会総合専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本消化器がん検診学会消化器がん検診総合認定医
  • 日本ヘリコバクター学会H. pylori感染症認定医

おなかの中からふくいを元気にする。を掲げ毎日の診療にあたっています。
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