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家族に大腸がん・大腸ポリープがいる方へ。大腸カメラを考える目安を解説

 

0.はじめに

 

こんにちは。ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。

お盆の時期は、ご家族や親戚と集まる機会も多く、ゆっくりとお過ごしになられた方も多いかと思います。

そんな中で、健康の話になり、

  • 「父が大腸がんになった」
  • 「母が大腸ポリープを何個も取っている」
  • 「兄弟が若くして大腸がんになった」

といった話を聞いて、急に自分のことが心配になった方もいらっしゃるかもしれません。

外来でも、

「家族に大腸がんがいるのですが、私も大腸カメラを受けた方がいいですか?」

「親にポリープがたくさんあったのですが、遺伝するのでしょうか?」

というご質問をいただくことがあります。

まずお伝えしたいのは、家族に大腸がんや大腸ポリープがあるからといって、自分も必ず同じ病気になるわけではありません。

一方で、大腸がんでは「家族歴」はリスクを考えるうえで大切な情報のひとつです。

特に、ご家族の中に若くして大腸がんになった方がいる場合や、複数の血縁者に大腸がんがみられる場合には、一度ご自身の検査について考えておくことが大切です。

今回は、家族に大腸がん・大腸ポリープがある方に向けて、

  • 家族歴とは何か
  • どのような家族歴に特に注意したいのか
  • 大腸ポリープの家族歴はどう考えるのか
  • 何歳ごろから大腸カメラを相談したらよいのか

について、できるだけ分かりやすくお話しします。

 

 

1. 家族歴は大腸がんのリスクを考える大切な情報です

 

 

大腸がんは、年齢や生活習慣などさまざまな要因が重なって発生すると考えられています。

その中のひとつが「家族歴」です。

家族歴とは、血縁のあるご家族に、どのような病気があったかという情報です。

特に医学的によく確認するのが、

  • 両親
  • 兄弟・姉妹
  • 子ども

といった第一度近親者と呼ばれる近い血縁者です。

国立がん研究センターでも、大腸がんの発生には家族の病歴との関わりがあるとされています。

ですから、診察の際に「ご家族に大腸がんの方はいませんか?」とお聞きするのは、その方の大腸がんのリスクを考えるためなのです。

 

 

2.「家族に大腸がんがいる=遺伝する」ではありません

 

 

ここは、とても大切なところです。

家族に大腸がんの方がいるからといって、すぐに「遺伝性の大腸がん」と考えるわけではありません。

大腸がんの多くは、加齢、生活習慣、環境など、複数の要因が関係して発生します。

家族で生活していると、食生活や運動習慣などが似ることもあります。そのため、家族の中で同じ病気がみられたとしても、それだけで遺伝が原因とは判断できません。

一方で、大腸がんの中には、遺伝的な体質が強く関わるものがあります。

  • リンチ症候群
  • 家族性大腸腺腫症(FAP)

などが代表的です。

こうした病気は一般的な大腸がんとは検査の始め方やフォローの方法が異なることがあるため、疑われる場合には専門的な評価が必要になります。

つまり、

「家族に大腸がんがいるから怖い」と考えるのではなく、「自分の家族歴を一度整理しておこう」と考えることが大切です。

 

3.大切なのは「誰が・何歳で・何人」です

 

 

 

家族歴を考えるとき、「大腸がんの人がいるか、いないか」だけでは十分ではありません。

特に確認しておきたいのは、次の3つです。

① 誰が大腸がんになったのか

父・母・兄弟姉妹・子どもなど、近い血縁者に大腸がんの方がいるかを確認します。

② 何歳で大腸がんになったのか

70代や80代で大腸がんになった場合と、30代や40代といった比較的若い時期に大腸がんになった場合では、家族歴の意味合いが異なることがあります。

特に50歳未満で大腸がんになった血縁者がいる場合には、若いから自分には関係ないと考えず、一度消化器内科で相談しておくとよいでしょう。

③ 家族の中に何人いるのか

一人だけではなく、両親・兄弟姉妹・祖父母・叔父叔母など、複数の血縁者に大腸がんがみられる場合には、より詳しく家族歴を確認することがあります。

日本消化器内視鏡学会のガイドラインでも、近い血縁者に複数の大腸がん患者がいる場合や、若くして大腸がんになった血縁者がいる場合には、遺伝性大腸がんの可能性も考慮して大腸内視鏡検査を検討する考え方が示されています。

 

 

4.家族に大腸ポリープがある場合はどう考える?

 

 

では、「家族は大腸がんではなく、大腸ポリープだった」という場合はどうでしょうか。

ここでは、ポリープの種類・数・大きさ・見つかった年齢によって意味が変わります。

そもそも大腸ポリープは一種類ではありません。

中には、大腸がんの前段階になる可能性がある「腺腫」や一部の「鋸歯状病変」がある一方で、がん化する可能性が低いポリープもあります。

詳しくは、当院の大腸ポリープについての解説もご覧ください。

そのため、

  • 「父がポリープを1個取った」
  • 「兄が若い頃から何十個もポリープを指摘されている」

では、医学的な意味は同じではありません。

ご家族の詳しい病理結果まで分からないことも多いと思います。その場合も心配しすぎる必要はありませんが、分かる範囲で「何歳ごろに」「何個くらい」といった情報を確認しておくと、診察の参考になります。

 

 

5.家族歴がある方は何歳から大腸カメラを考える?

 

 

ここが一番気になるところではないでしょうか。

結論から言うと、「家族に大腸がんが一人いたら、全員○歳から大腸カメラ」という一律のルールではありません。

ご本人の年齢、症状、便潜血検査の結果、過去のポリープ歴、ご家族が大腸がんになった年齢や人数などを合わせて判断します。

日本では、症状のない一般の方については、40歳以上の男女を対象に年1回の便潜血検査による大腸がん検診が行われています。

一方で、濃厚な大腸がんの家族歴がある方については、それより若い年代から大腸カメラを検討することがあります。

日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、特に近い血縁者に大腸がんの方が複数いる場合や、50歳未満で大腸がんになった血縁者がいる場合には、大腸がんになったご家族の年齢より10歳ほど若い時期から大腸カメラを検討するという考え方が紹介されています。

ただし、この「10歳前」という考え方については、同ガイドラインでも日本での妥当性について今後の検証が必要とされています。

そのため、すべての方に機械的に当てはめるのではなく、「自分の場合はいつから考えればよいか」を医師と相談することが大切です。

大腸カメラについては当院の大腸カメラ(大腸内視鏡)についてもご覧ください。

 

6.便潜血が陰性なら大丈夫?

 

 

「毎年の便潜血検査は陰性だから、大腸がんの家族歴があっても大丈夫でしょうか?」

これもよくある疑問です。

便潜血検査は、大腸がん検診として非常に大切な検査です。

ただし、便潜血検査は便の中に血液が混じっているかを調べる検査であり、大腸ポリープや大腸がんが存在しないことを直接確認する検査ではありません。

大腸の病変からは毎日必ず出血するわけではないため、便潜血が陰性でも病変が存在する可能性はあります。

特に、

  • 血便がある
  • 便通が以前と変わった
  • 原因の分からない貧血を指摘された
  • 体重が減ってきた
  • 濃厚な大腸がんの家族歴がある
  • 過去に大腸ポリープを切除している

といった場合には、便潜血の結果だけで判断せず、一度消化器内科へご相談ください。

反対に、便潜血検査が陽性になった場合には、精密検査として大腸カメラを受けることが大切です。

 

 

7.遺伝性大腸がんを考えることがあるケース

 

 

すべての家族歴で遺伝子検査が必要になるわけではありません。

一方で、次のような場合には、遺伝的な要因について詳しく確認することがあります。

  • 若い年齢で大腸がんになった方がいる
  • 家族の中に大腸がんの方が複数いる
  • 一人の方に複数のがんが発生している
  • 若い頃から非常に多くの大腸ポリープができている
  • 家族性大腸腺腫症やリンチ症候群と診断された家族がいる

このような場合でも、家族歴だけで診断が決まるわけではありません。

必要に応じて専門医療機関での評価や、遺伝カウンセリング、遺伝学的検査などを検討することがあります。

「遺伝子検査を受けた方がいいのでは?」と最初から心配しすぎず、まずは家族歴を整理して医師に相談するところからで大丈夫です。

 

8.当院でご相談いただくときに教えてほしいこと

 

 

 

「家族歴が気になるので相談したい」という場合には、次の情報が分かる範囲であると、とても参考になります。

  • 大腸がん・大腸ポリープになった方との関係
  • 何歳ごろに診断されたか
  • 大腸がんだったのか、ポリープだったのか
  • ポリープの場合、数が多かったか
  • ご家族の中に他にも大腸がんの方がいるか
  • ご自身が過去に大腸カメラを受けたことがあるか
  • ご自身に血便・便通異常・貧血などがないか

もちろん、すべて分からなくても問題ありません。

「父が大腸がんだったけれど、何歳だったか詳しく分からない」といった情報だけでも、まずはお聞かせください。

当院では、大腸カメラを受ける必要性やタイミングについて、その方の年齢・症状・家族歴・過去の検査歴などを踏まえてご相談しています。

大腸カメラが必要と判断した場合には、検査に伴う負担を少しでも減らせるよう、鎮静剤を使用した検査にも対応しています。
また、検査中に切除可能なポリープが見つかった場合には、状態を確認したうえで日帰りで切除できる場合があります。

 

9. 家族歴がある場合、カメラは保険診療で受けられる?

 

ご家族に大腸がんになった方がいることは、大腸カメラを受けるかどうかを考えるうえで大切な情報です。

ただし、家族に大腸がんの方がいるという「家族歴」だけで、必ずしも大腸カメラが保険診療になるわけではありません。

血便や便通の変化、腹痛などの症状がある場合や、健康診断などで便潜血検査が陽性になった場合には、医師の診察のうえ、保険診療で大腸カメラを行うことがあります。

一方で、症状や便潜血検査などの異常がなく、「家族に大腸がんの人がいるので、一度大腸カメラで調べておきたい」という場合には、検診としての意味合いが強くなるため、原則として自費診療での検査となります。

家族歴がある方は、ご自身の年齢やご家族が大腸がんになった年齢などによっても考え方が変わります。検査を受けた方がよいか迷われる場合は、まずはお気軽にご相談ください。

 

よくある質問 Q&A

 

 

Q1.父が70代で大腸がんになりました。私もすぐ大腸カメラが必要ですか?

家族に大腸がんの方がいることは重要な情報ですが、それだけですぐに全員が大腸カメラを受けなければならないという意味ではありません。

ご自身の年齢、症状、便潜血検査、過去の大腸カメラ歴などを合わせて考えます。40歳以上の方は、まず毎年の大腸がん検診を忘れずに受けることが大切です。検査のタイミングに迷う場合には、一度ご相談ください。

Q2.母に大腸ポリープがありました。私にもできますか?

ご家族に大腸ポリープがあるからといって、ご本人にも必ずポリープができるわけではありません。

ただし、ポリープの種類や数、見つかった年齢などによっては参考になることがあります。特に若い頃から多数のポリープがみられる場合には、一度医師へお伝えください。

Q3.家族歴がありますが、便潜血はずっと陰性です。それでも大腸カメラを受けた方がいいですか?

便潜血が陰性であることだけでは、大腸ポリープや大腸がんがないとは言い切れません。

ご家族が大腸がんになった年齢や人数、ご自身の年齢・症状などによっては、大腸カメラを検討する場合があります。「家族歴があるけれど、いつ受ければよいか分からない」という段階でご相談いただいて大丈夫です。

Q4.家族に大腸がんがいる場合、遺伝子検査を受けた方がいいですか?

すべての方に遺伝子検査が必要なわけではありません。

若年での大腸がん、複数の血縁者の大腸がん、多数の大腸ポリープなど、遺伝性大腸がんを疑う特徴がある場合に、専門的な評価を検討します。必要性については、まず医師へご相談ください。

Q5.大腸カメラが怖くて、なかなか受ける決心がつきません。

大腸カメラに不安を感じる方は少なくありません。

当院では、患者さんの状態を確認したうえで鎮静剤を使用するなど、検査に伴う苦痛や不安をできるだけ少なくできるよう工夫しています。

検査を受けるかどうかを決めてから受診する必要はありません。「自分には大腸カメラが必要なのか」というご相談からでも大丈夫です。

 

まとめ

 

いかがでしたか?

今回のポイントをまとめます。

  • 大腸がんでは家族歴もリスクを考える大切な情報
  • 家族に大腸がんがいても、必ず遺伝するわけではない
  • 「誰が・何歳で・何人」が重要
  • 若くして大腸がんになった方や、複数の大腸がん患者が家族にいる場合は一度相談をなさってください。
  •  
  • 大腸ポリープは種類・数・発見年齢によって意味が異なる
  • 40歳以上では毎年の便潜血検査を忘れずに
  • 家族歴が濃厚な場合には、より若い時期から大腸カメラを検討することがある

家族歴について大切なのは、必要以上に怖がることではありません。

ご自身のリスクを知り、必要なタイミングで適切な検査につなげることです。

特に、ご家族に大腸がんの方がいると、「自分も検査した方がよいのかな」と気になりながら、何年もそのままになっている方もいらっしゃると思います。

そのような場合には、大腸カメラを受けるかどうかも含めて、一度消化器内科で相談してみてください。

ふくい内視鏡・胃腸クリニックでは、福井市で胃カメラ・大腸カメラを中心とした消化器診療を行っています。

家族歴や大腸の症状、大腸カメラを受けるタイミングについてお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

「おなかの中からふくいを元気にする。」

これからも、皆さまがご自身とご家族の健康について考えるきっかけになる情報をお届けしてまいります。

 

参考文献・参考情報

  • 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診」
  • 日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」
  • 日本消化器内視鏡学会雑誌 2020;62(8):1519-1560.
  • 「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024年版」2024. 大腸癌研究会 編
  • 「大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版)」2020. 日本消化器病学会

この記事を執筆した人

この記事を執筆した人

宇賀治 良平

  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化日本肝臓病学会専門医
  • 器病学会専門医
  • 日本内科学会総合専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本消化器がん検診学会消化器がん検診総合認定医
  • 日本ヘリコバクター学会H. pylori感染症認定医

おなかの中からふくいを元気にする。を掲げ毎日の診療にあたっています。
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