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大腸がん検診と大腸カメラは何が違う?知っておきたい検査の使い分け 消化器内科専門医が解説

0.はじめに

こんにちは。
ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。

9月もそろそろ終わりますね。朝・夜とだんだん肌寒くなってきましたね。体調にはお気をつけください!

さて、今回のお話は、大腸がん検診と大腸カメラについてです。

健康診断や市町村の検診で、「大腸がん検診を受けてください」

という案内を受け取ったことがある方も多いと思います。

その一方で、

  • 「大腸がん検診って、大腸カメラを受けること?」
  • 「便潜血検査だけで本当に大丈夫?」
  • 「便潜血が陰性なら、大腸カメラは受けなくてもいい?」

と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

実は、便潜血検査と大腸カメラは、同じ「大腸を調べる検査」でも役割が違います。

今回は大腸がん検診と大腸カメラの違い、それぞれの検査をどのように使い分ければよいのかについて、できるだけ分かりやすく解説します。

1.まず結論:大腸がん検診と大腸カメラは役割が違います

 

 

最初に、結論です。

日本で一般的に行われている大腸がん検診の基本は、便潜血検査です。

40歳以上の方は症状がなくても年に1回の便潜血検査による大腸がん検診を受けることが勧められています。

一方、大腸カメラは、大腸の中を直接カメラを入れて、中を直接に観察する検査です。

便潜血検査で異常を指摘された方や、血便・便通異常などの症状がある方、過去に大腸ポリープを指摘された方などでは、大腸カメラを使って詳しく調べることがあります。

つまり、

便潜血検査は「異常がありそうな人を見つける検査」

大腸カメラは「大腸の中を直接見て、詳しく調べる検査」

と考えると分かりやすいと思います。

 

2.大腸がん検診では、なぜ便潜血検査をするの?

 

便潜血検査は便の中に混じっている「ごく少量」の血液の有無を調べる検査です。

大腸がんや大腸ポリープなどから出血している場合、その血液が便に混じることがあります。

便潜血検査の大きなメリットは、比較的簡単に、多くの方が受けられることです。

通常は食事制限や下剤を必要とせず、自宅で便を採取して検査することができます。

現在の日本の大腸がん検診では、免疫便潜血検査が標準的なスクリーニング方法として用いられています。

症状のない多くの方を対象にする検診では、まず便潜血検査を定期的に受けることが基本になります。

 

3.便潜血が陽性だったら、大腸カメラへ

 

 

便潜血検査で陽性となった場合でも、

「大腸がんです」という意味ではありません。

痔や大腸ポリープなど、がん以外の原因でも検査が陽性になることもあります。

また、便潜血が陽性になった原因は便潜血検査だけで判断することはできません。

そのため、便潜血検査が陽性となった場合には、大腸のどこから出血しているのかを確認するために、大腸カメラによる精密検査を検討します。

「痔があるから、その血だろう」

「去年は大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」

と自己判断して、精密検査を受けずに済ませることはおすすめできません。

便潜血検査はあくまでも「入口」
大腸カメラは「原因を詳しく調べる検査」
という関係を覚えておいていただくとよいと思います。

 

4.大腸カメラでできること

 

 

大腸カメラでは、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の粘膜を直接観察します。

便潜血検査とは違い、実際に大腸の中を見ることで、

  • 大腸がんがないか
  • 大腸ポリープがないか
  • 大腸に炎症が起きていないか
  • 出血している場所がないか

などを確認することができます。

検査中に大腸ポリープが見つかった場合には、大きさや形、場所などによっては、必要に応じてその場で内視鏡的に切除できることもあります。

その一方で、大腸カメラには検査前の食事調整や、前日夜、当日の下剤による腸管洗浄などの準備が必要です。

便潜血検査と大腸カメラは、検査で分かることだけでなく、患者さんの負担にも違いがあります。

 

5.「最初から全員、大腸カメラをすればいいのでは?」

 

 

患者さんから時々聞かれることがあります。

確かに大腸カメラは大腸の中を直接観察できる非常に有用な検査です。

しかし、症状のない多くの方を対象にする「がん検診」として考える場合には、検査による利益だけではなく、

検査に伴う負担や不利益についても考える必要があります。

 

大腸カメラでは、

  • ・検査前の食事調整+下剤による腸管洗浄
  • ・検査そのものによる身体的負担
  • ・まれではありますが、出血や穿孔などの偶発症

などがあります。

そのため、日本では症状のない一般の方を対象とした大腸がん検診では、便潜血検査を定期的に受けることが基本となっています。

これは、「大腸カメラを受ける意味がない」ということではありません。

大腸カメラは、便潜血陽性時の精密検査や、症状がある方、大腸ポリープを切除した後の経過観察などでは、とても重要な検査です。

「検診=便潜血検査」と「診療・精密検査=大腸カメラ」は、目的を分けて考えることが大切です。

 

6.便潜血が陰性なら、大腸は絶対に大丈夫?

 

 

ここも注意が必要です。

便潜血検査が陰性だったからといって、

「大腸に病気が絶対にない」という意味ではありません。

大腸ポリープや大腸がんがあっても、常に出血しているとは限らず、便潜血検査を提出するタイミングにも影響を受けます。

そのため、大腸がん検診は一度だけ受けて終わりではなく、対象となる方は定期的に受けることが大切です。

また、便潜血検査が陰性であっても、次のような症状がある場合には、検診の結果だけで判断しないようにしてください。

  • 血便が出る
  • 便が以前より細くなった
  • 便秘や下痢など、便通の変化が続いている
  • 原因の分からない貧血を指摘された
  • 腹痛が続いている
  • 意図しない体重減少がある

このような場合には、次の検診を待つのではなく、消化器内科への相談を検討してください。

 

7.「検診」と「症状があるときの検査」は別物です

 

 

大腸がん検診は、基本的には症状のない方を対象に行われます。

一方で、

  • 「血便が出た」
  • 「急に便通が変わった」
  • 「貧血を指摘された」
  • 「腹痛が続いている」

といった症状がある場合は、単に「検診を受ける」というよりも、症状の原因を調べるために医療機関を受診するという考え方になります。

この場合には、症状や年齢、これまでの病歴などを確認したうえで、大腸カメラを含めた必要な検査を検討します。

「検診」と「診療」は似ているように見えますが、目的が違います。

 

8.40歳を過ぎたら、まず何をすればいい?

 

 

これまで特に大腸の病気を指摘されたことがない方や症状がない方は、
まずは定期的な大腸がん検診を受けることが大切です。

そして、

  • 便潜血検査が陽性になった
  • 血便や便通異常などの症状が出た
  • 以前に大腸ポリープを切除した
  • これまでの大腸カメラで経過観察を勧められている
  • 大腸がんや大腸ポリープの家族歴がある

などの場合には、大腸カメラについて医師に相談するとよいと思います。

全員が同じ検査を、同じ間隔で受けるわけではありません。

年齢、症状、これまでの検査結果、大腸ポリープの既往、家族歴などによって、検査の考え方は変わります。

「自分の場合はどうしたらよいのだろう?」と迷った場合には、
これまでの検査結果を持参して消化器内科で相談してみてください。

 

よくある質問 Q&A

 

 

Q.便潜血が陰性なら、大腸カメラは必要ありませんか?

症状がなく、平均的なリスクの方では、定期的な便潜血検査による大腸がん検診を受けることが基本です。

血便や持続する便通異常などの症状がある場合、大腸ポリープの既往がある場合などでは考え方が異なります。

Q.便潜血が1回だけ陽性でした。もう一度、便潜血検査をすればいいですか?

便潜血検査で陽性となった場合には、便潜血検査を繰り返して陰性になるか確認するのではなく、精密検査について医療機関へ相談することが基本です。

Q.大腸カメラを受けた年も便潜血検査は必要ですか?

大腸カメラを受けた時期や検査結果、ポリープの有無などによって考え方が変わります。

前回の大腸カメラの結果と、次回の検査予定を確認したうえで、担当医に相談してください。

Q.症状がありますが、まず便潜血検査を受ければいいですか?

血便や持続する便通異常、原因の分からない貧血、腹痛などがある場合には、大腸がん検診ではなく診察を受けることをおすすめします。

 

まとめ

 

いかがでしたか?

今回は、大腸がん検診と大腸カメラの違いについて解説しました。

  • 日本の大腸がん検診では、便潜血検査が基本です。
  • 便潜血検査は、大腸からの微量な出血を調べるスクリーニング検査です。
  • 便潜血陽性の場合には、大腸カメラによる精密検査を検討します。
  • 便潜血検査が陰性でも、血便や便通異常などの症状があれば医療機関への相談が必要です。
  •  
  • 検診と、症状がある方の診療では、検査の目的が異なります。

大腸がん検診と大腸カメラは、どちらか一方が優れているという関係ではありません。

便潜血検査や大腸カメラについて、「自分の場合はどうしたらいいのだろう?」と迷われる場合には、
一度消化器内科へご相談ください。

おなかの中からふくいを元気にする。ふくい内視鏡・胃腸クリニックでした。

参考文献・参考情報

  • 厚生労働省 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針
  • 国立がん研究センター 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024年度版
  • 日本消化器がん検診学会 大腸がん検診マニュアル 2021年度改訂版
  • 日本消化器内視鏡学会 大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン

この記事を執筆した人

この記事を執筆した人

宇賀治 良平

  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化日本肝臓病学会専門医
  • 器病学会専門医
  • 日本内科学会総合専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本消化器がん検診学会消化器がん検診総合認定医
  • 日本ヘリコバクター学会H. pylori感染症認定医

おなかの中からふくいを元気にする。を掲げ毎日の診療にあたっています。
少しでも辛くない検査をより多くの方に届けられるよう、スタッフ一丸となってより良い診療を提供します。