TOPへ

ブログ

ピロリ菌を除菌したら、もう胃カメラは必要ない?〜消化病専門医が解説〜

0.はじめに

こんばんは。
ふくい内視鏡・胃腸クリニック 宇賀治良平です。

10月も半ばになり、朝晩はずいぶん涼しくなりましたね!そう思うこともあれば、日中は暑くて・・

気候の変動にはご注意ください!

 

さて、今回は「ピロリ菌を除菌した後の胃カメラ」についてお話しします。

外来では、以前ピロリ菌を除菌した方から、

  • 「ピロリ菌を除菌したので、もう胃カメラは必要ないですよね?」
  • 「除菌してから5年以上経っていますが、検査を受けた方がいいですか?」
  • 「ピロリ菌がいなくなっても胃がんになることはあるんですか?」

といったご質問をいただくことがあります。

確かに、ピロリ菌を除菌することは、胃がんの予防を考えるうえで非常に大切です。

しかし、ピロリ菌を除菌できたからといって、将来の胃がんの可能性が完全になくなるわけではありません。

今回は、ピロリ菌を除菌した後も胃カメラが大切な理由や、検査を受ける間隔について分かりやすく解説します。

 

1.結論:ピロリ菌を除菌した後も胃カメラを定期的にすることが望ましいです。

 

 

最初に結論からお伝えします。

ピロリ菌を除菌した後でも、定期的な胃カメラをおすすめすることがあります。

ピロリ菌の除菌によって胃がんのリスクを下げることはできますが、そのリスクを完全にゼロにすることはできないためです。

特に、除菌する前から胃の粘膜に萎縮性胃炎などの変化があった場合には、除菌後も注意が必要です。

ただし、これはすべての方が毎年胃カメラを受けなければならないという意味ではありません。

大切なのは、以前の胃カメラで胃の粘膜がどのような状態だったのかを確認し、ご自身に合った検査間隔を考えることです。

 

2.なぜピロリ菌を除菌すると胃がんの予防につながるの?

 

 

ピロリ菌は、胃の粘膜に感染する細菌です。

ピロリ菌が感染していると、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こることがあります。

その炎症が長い期間続くことによって、胃の粘膜にさまざまな変化が起こり、胃がんのリスクが高くなることが知られています。

そこで、抗菌薬などを使ってピロリ菌を除菌することによって、胃の炎症の改善が期待できます。

また、除菌することで、その後の胃がんの発生リスクを下げられることも分かっています。

つまり、ピロリ菌の除菌は、胃の健康を守るための重要な治療です。

ただし、ここで知っておいていただきたいことがあります。

それは、ピロリ菌がいなくなったことと、胃の粘膜が完全に元の状態へ戻ることは、必ずしも同じではないということです。

 

3.除菌しても胃がんのリスクが残るのはなぜ?

 

 

 

ピロリ菌を除菌した後も、胃がんが発生することがあります。

その理由を理解するうえで知っていただきたいのが、「萎縮性胃炎」「腸上皮化生」という言葉です。

萎縮性胃炎

萎縮性胃炎とは、胃の粘膜に長い期間炎症が続いた結果、胃の粘膜が薄くなったり、正常な構造が変化したりした状態です。

ピロリ菌の感染が長く続いた方にみられることがあります。

ピロリ菌を除菌すると胃の炎症は改善していきますが、すでに起こっていた胃粘膜の変化が全て元どおりになるとは限りません。

そのため除菌後でも胃がんのリスクが残ることがあります。

腸上皮化生

さらに、胃の粘膜に長く炎症が続くことで、「腸上皮化生」という変化が起こることがあります。

これは胃の粘膜の一部が、腸の粘膜に似た性質を持つようになる変化です。

腸上皮化生がみられる方では、胃がんのリスクについても注意が必要と考えられています。

ただし、萎縮性胃炎や腸上皮化生があるからといって、必ず胃がんになるという意味ではありません。

大切なのは、胃の粘膜の状態を把握して、必要な時期に確認を続けることです。

 

 

4.除菌後の胃カメラは何年ごとに受ければいいの?

 

 

 

ここは、多くの患者さんが気になるところだと思います。

  • 「毎年受けた方がよいの?」
  • 「2年に1回でも大丈夫?」
  • 「除菌して何年も経っているけれど、今からでも検査が必要?」

実際には、すべての方に同じ検査間隔が当てはまるわけではありません。

例えば、次のような情報が参考になります。

  • 除菌する前の胃の粘膜の状態
  • 萎縮性胃炎の程度
  • 腸上皮化生の有無
  • 年齢
  • 胃がんの家族歴
  • 過去に胃がんの治療を受けたことがあるか
  • これまでの胃カメラの検査結果

一般的な胃がん検診では、50歳以上の方に2年に1回の検査が推奨されています。

ただし、これは症状のない方を対象とした一般的な検診の考え方です。

萎縮性胃炎が進行している方や、以前に胃がんの治療を受けた方などでは、通常の検診とは異なる間隔で検査を行うことがあります。

そのため、次回の検査時期は、過去の胃カメラの結果を踏まえて医師と相談することが大切です。

 

5.何年も胃カメラを受けていない場合はどうしたらいいの?

 

 

「ピロリ菌を除菌してから、もう数年以上胃カメラを受けていません」

という方もいらっしゃると思います。

その場合、まず確認していただきたいことがあります。

それは、最後に胃カメラを受けたのがいつなのか、そして、そのときの結果はどうだったのかということです。

特に、以前の検査で、

  • 萎縮性胃炎を指摘された
  • 腸上皮化生を指摘された
  • 胃の粘膜に変化があると説明された
  • 定期的な胃カメラを勧められていた

という方では、その後の検査について一度相談していただくのが良いとおもいます。

もちろん、長い間検査を受けていなかったからといって、必ず病気が見つかるというわけではありません。

必要以上に心配する必要はありませんが、除菌後も胃の状態を確認することには意味があります。

以前の検査結果が残っていれば、受診時に持参していただくと参考になります。

 

6.胃の症状がなければ、検査を受けなくても大丈夫?

 

 

「胃の痛みもないし、食事も普通に食べられています。それでも胃カメラが必要ですか?」

このようなご質問もあると思います。

実は、胃がんは早い段階では自覚症状がほとんどないことがあります。

そのため、胃の痛みや胃もたれがないからといって、胃の中に病気がないとは言い切れません。

もちろん、症状がない方全員に頻繁な胃カメラが必要というわけではありません。

ただ、胃の症状だけでは判断できない病気があるため、年齢や以前の検査結果などを踏まえて、必要な時期に確認することが大切です。

一方で、

  • 胃の痛みが続いている
  • 食欲が落ちている
  • 食べ物がつかえる感じがある
  • 原因の分からない体重減少がある
  • 黒い便が出る
  • 貧血を指摘された

といった場合には、予定していた胃がん検診を待たずに医療機関へ相談してください。

特に吐血や黒い便に加えて、強いふらつきや意識が遠のく感じがある場合には、緊急の対応が必要になることがあります。

 

7.ピロリ菌を除菌した方に知っておいてほしいこと

 

 

最後に、ピロリ菌の除菌治療を受けた方に、ぜひ確認していただきたいことがあります。

まず、除菌治療の薬を飲み終わっただけでは、必ずしも除菌が成功したとは言えません。

除菌治療後には、尿素呼気試験や便中抗原検査などを用いて、ピロリ菌がいなくなったことを確認します。

もし、除菌が成功したかどうか分からない場合には、以前治療を受けた医療機関などで確認してみてください。

そして、除菌に成功していた場合でも、それで胃の検査がすべて終わりというわけではありません。

ご自身の胃の状態を知り、状態に合わせて必要な検査を受けていくことが大切です。

また、禁煙や塩分のとりすぎに気をつけることなど、日頃の生活習慣を整えることも、胃の健康を考えるうえで大切です。

「ピロリ菌を除菌すること」と「その後も胃の健康を確認していくこと」。

この2つを合わせて考えていただければと思います。

 

よくある質問 Q&A

 

 

Q.ピロリ菌を除菌すれば、胃がんにはなりませんか?

ピロリ菌を除菌することで胃がんのリスクを下げることはできますが、完全にゼロになるわけではありません。萎縮性胃炎などの変化が残っている場合、除菌後も定期的な胃カメラを勧めることがあります。

Q.除菌してから10年以上経っています。今から胃カメラを受けても意味がありますか?

除菌後に長い時間が経過していても、胃の状態を確認することには意味があります。
特に以前に萎縮性胃炎などを指摘されていた場合には、現在の胃の粘膜の状態を確認することが大切です。

Q.除菌後の胃カメラは毎年受けるべきですか?

すべての方に毎年の胃カメラが必要というわけではありません。胃の粘膜の状態や年齢、過去の病歴などによって、適切な検査間隔は異なります。以前の検査結果をもとに、医師と相談して決めることが大切です。

Q.除菌後の胃の調子がよければ安心ですか?

胃の調子がよいことは大切ですが、症状がないだけで胃がんなどの病気がないと判断することはできません。必要な方は症状の有無にかかわらず、適切な時期に胃カメラで確認していきましょう。

 

まとめ

 

 

いかがでしたか?

今回は、「ピロリ菌を除菌した後も胃カメラは必要なのか?」という疑問についてお話ししました。

ピロリ菌を除菌できたと聞くと、「これで胃の病気の心配はなくなった」と安心される方もいらっしゃるかもしれません。

除菌に成功したことは、胃の健康にとって大切な一歩です。

しかし、そこで終わりにするのではなく、ご自身の胃の状態を知り、必要な時期に確認を続けていくことが大切です。

以前ピロリ菌を除菌したけれど、その後の胃カメラを受けていない方や、次の検査時期が分からない方は、一度ご相談ください。

当院のピロリ菌検査や除菌治療については、ピロリ菌感染の解説ページもご覧ください。

また、胃カメラについて詳しく知りたい方は、当院の胃カメラ検査のページも参考にしてください。

 

おなかの中からふくいを元気にする。

ふくい内視鏡・胃腸クリニックでした。

 

参考文献・参考情報

  • 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡 Q&A (https://www.jges.net/citizen/faq?ref=citizen)
  • 日本ヘリコバクター学会「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024」
  • 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん検診について」

この記事を執筆した人

この記事を執筆した人

宇賀治 良平

  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化日本肝臓病学会専門医
  • 器病学会専門医
  • 日本内科学会総合専門医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本消化器がん検診学会消化器がん検診総合認定医
  • 日本ヘリコバクター学会H. pylori感染症認定医

おなかの中からふくいを元気にする。を掲げ毎日の診療にあたっています。
少しでも辛くない検査をより多くの方に届けられるよう、スタッフ一丸となってより良い診療を提供します。